児戯の愚かさ/楽しいバッドエンド

児戯の愚かさ

 どうやらマスターはめずらしく何か思い悩んでいるらしい。
 マシュ・キリエライトは、本日の滞在先であるホテルの部屋の中で頬杖をついているマスターを気遣わしげに見つめていた。気遣わしいと言っているが、普段天衣無縫に振る舞っているマスターがこうも思い悩んでいるのが不可解で、どちらかというと怪訝に思っている、と言った方が適切だった。
 どうも先ほどライダー陣営と衝突し、ロード・エルメロイⅡ世が子供のような癇癪を起したあたりからおかしい。確かにマスターはロードを憎からず思っている、もとい、想っているらしいことはマシュにすら筒抜けだったので何かしら思うところもあったのだろうとは思うが、それにしても一時間ほど口も開かないのはさすがにおかしい。
「あの……せんぱ」
「決めた!」
 意を決して声をかけようとしたマシュだったが、突然立ち上がったマスターに阻まれる。
「マシュ、私ちょっと出かけて来るね!」
「えっ!? 先輩、こんな時間にどこへ?」
「ウェイバー君のところ!」
 てっきりコンビニにでも行くのかと思ったら言うに事欠いてウェイバー・ベルベットを訪ねると言い出す。相変わらず行動が読めないマスターが何を考えてそうしようと思ったのか問いただすと、
「やっぱりね、お詫びしなきゃいけないと思うのね。いきなりあんな風に突っかかっていったら印象最悪だし、でも先生はほら、あの通りじゃん? 自分から謝るわけないよねえ~。だから不肖この私が、お詫びに行こうと! サーヴァントの不始末はマスターの不始末だし?」
「はあ……」
 話はわかった。が、何もこんな時間に行かなくてもいいのでは?
「善は急げ、お礼参りってやつだよ、マシュ」
「先輩、後半は意味が違います……」
「そうだっけ? まあいいじゃん。ライダー陣営とは協力しなきゃいけないのにこのままじゃ元も子もないよ? 事態は一刻を争うのだ!」
「それはわかりますが、あっ、先輩!」
 結局マシュは、少女が部屋を飛び出すのを止められなかった。もっとも、これまでにマシュの言うことを聞いてくれたことなど数えるほどしかない、どころか数えるほどもないくらいだから仕方ない。
「先生になんか聞かれたらお腹壊して寝てるってでも言っといてね~」
 別室で休んでいるロードが気づくのはいつだろうか。
「……はぁ……」
 マシュはなんとなく胃が痛む気がしてみぞおちのあたりを撫でさすった。

***

 と、殊勝な心がけで飛び出してきたわけではない。
 マスターたる彼女はロード・エルメロイⅡ世を慕っている。慕情とか憧れとかそういう生ぬるい感情などではない。男として彼を欲しているし、女として自分を見てほしいと思っている。冬木の街を行動する間にどうにかこうにかいい感じになってしまえば後はどうとでもしてやろうと思っていたが、名軍師を内包しているためかそもそも堅物だったのか一筋縄ではいかない。というかおそらくそもそも「そういう対象」の土俵にすら上がれていない。おそらく彼にとってはマスターだろうがなんだろうが、元いた場所に多数いる生徒の一人、くらいの認識なのだろう。悔しさに枕を濡らしていた矢先に現れたのがウェイバー・ベルベット。ばっさり言ってしまえば十年前のロード・エルメロイⅡ世。当時十九歳……にしてはやや幼い気がしないでもないがそこはもうどうでもいい。
 かわいい。あとチョロそう。
 彼女が抱いた第一印象はこれだった。
 そうしてピンと来てしまったのである。

 今のロード・エルメロイⅡ世が手に入らないなら、ウェイバー・ベルベットの時点で食ってしまえばいいじゃない!

 おそらく暴論と呼べるものだろう。が、彼女にとっては名案中の名案。だって好いた男の童貞を食えるなんてめったにあるまい!? ということで、夜の冬木にウキウキ気分で繰り出したのだった。これもまた一晩のアバンチュール。マシュにはちょっと悪いと思っている。
 ウェイバー・ベルベットがマッケンジーという老夫妻の元に、自分が孫だという暗示をかけて居候していることはすでに調べていた。なんともせせこましい滞在方法だと思わないでもないが、なんの経済的後ろ盾もなく単身で乗り込んできているのだから仕方ないのだろう。
 少女は目当ての一軒家を見つけると、灯りのついた窓に向かって意識を集中させた。

「――ん!?」
 凡才とはいえ魔術師、ウェイバーは外から放たれたらしいちりちりとした魔力の気配に慌てて立ち上がった。まさかサーヴァントか、それとも――。
 とるものもとりあえずの勢いで窓を開ける。やや不用意だったのは否めないがそれだけ動揺していたのだろう。果たして窓の外、ウェイバーの目の前には何もなく、では眼下かと思って見下ろすと、
「こんばんはー!」
 先ほどキャスター討伐の現場にいた少女が立っていた。
「あっ、お前、さっきの魔術師!」
「覚えててくれたんだー、うれしい!」
「うれしいって……」
 覚えるも何も、あれだけ険悪な雰囲気になった相手を(厳密に言うと突っかかってきたのは長髪のサーヴァントのほうだが)忘れるわけもない。何しに来た、と口を開こうとすると、背後からライダーがぬうっと身を乗り出してくる。
「なんだ坊主、客人か?」
「客なもんか! どう見たって敵だ敵!」
 好奇心が服を着て(着なくても)歩くようなライダーは、闇夜に紛れた訪問者を面白そうに眺めている。ええいややこしいことになる、と、その巨体をウェイバーは押し返そうとするが、その隙に少女は屋根の上まで一跳びに上がってきた。普通の人間のやれることではない。脚力を増強したのだろう。
「違うよお、謝りにきたの!」
「はあ? あ、おい! 何勝手に入って来てんだ!?」
「お邪魔しまぁす。よっと。さっきはごめんね。うちのサーヴァント、スイッチ入っちゃったらもう止められなくて。でも彼だって私だって、あなたたちとは敵対する意志なんてない。むしろ色々と協力したいと思ってる」
 一応ブーツは脱いでいるものの、勝手知ったる風に上り込んでくるのは無遠慮にもほどがある。が、向き合った視線は誠実そのもののように澄んでいるし、言葉にも嘘はなさそうだった。さりとてそれだけで信頼が築けるわけもない。
「……そんな漠然とした話、信じられるわけないだろ」
 ふと視線を下げると、彼女の右手の甲には令呪が刻まれていた。一画も使われてはいない。やはりあの長髪のキャスターのマスター、ということは、すなわち聖杯戦争の参加者なのだろうか? しかしキャスターが二人とはこれいかに。あれこれと考えるべきことが多すぎた。ウェイバーはひとまず、その問題は置いておくことにする。
「それは、事情が込み入ってて詳しくは話せないから……っていうのじゃ信用されないよね」
 困ったように眉を下げる彼女は十分に「かわいい」部類に入る。だからなおのこと、信用できない。
「当たり前だろ。油断させといて何するかわかったもんじゃない」
 大体素性も知れない女の言うことを鵜呑みにできるものか! 胡散臭そうな視線を物ともせず、というより、納得したように少女は笑う。
「そうだよね、だからお詫びも兼ねて……」
 脱いだブーツをその場に放り、しなりと両腕をウェイバーの肩に乗せ、顔を近づけた。
「私のこと、好きにしていいよ♡」

「……は?」
 時間がとまったかと思った。何を言われているのかわからないのと、彼女の艶めいた吐息が自分の唇を湿らせそうなほどに近寄られていることへの動揺。女の子っていい匂いなんだな、というアホのような考えすら頭の中をぐるりと駆け抜けていく。いや、そんな場合ではない。
「……なん、でも?」
「さすがに命とか令呪とかとられちゃ困るけど、それ以外だったらなんでもしてあげる♡」
 すると彼女の左手がウェイバーの太ももをするりと撫で上げるものだから、不慣れな少年はみるみる間に顔を赤くして飛びずさった。なんでもしてあげるというが明らかに「ある行為」に誘導しようとしている。
「いやいやいやいや何言ってんだお前!? そそそんなこと僕にいきなり」
「そうさな、坊主の言うとおりだ」
 ベッドに腰を下ろし事態を見守っていたライダーが怪訝そうに口を開く。
「小娘よ、貴様の言うことがどうもわからん。マスターではあるようだし、魔術師としてはそれなりと見受けるが、ここには余がいるというのにサーヴァントも連れずにのこのこやってくる真意が読めん」
 そう、それが言いたかったんだ、ボクは! と、ウェイバーは無言で何度か首肯して少女を問いただそうとする。とはいえそうやすやすと口は割るまいと思っていたのだが、ウェイバーとライダーが想像していたよりもずっとあっけらかんと彼女は述べる。
「真意、真意はねえ……お詫びっていう口実で、貴方のマスターに抱かれたいの」
「はぁ!?」
 顎が外れるかと思った。呆然とするウェイバーをよそにライダーと少女は話を進める。
「なんだ、惚れたのか」
「まあ……そういうとこかなあ」
「なるほどなあ」
 照れ臭そうにもじもじとスカートの裾をいじっているのはかわいい。それはいい。なんでそれでいきなり体を求めてくるんだ! 大体住居不法侵入だろ!! あとライダーはなんで納得してんだ! 同じ略奪という志をもっているからとか? ふざけんな!!
「ほ、惚れ、って……いきなり……そうだよ、いきなりすぎるだろ! 順番ってもんが」
 あまりの展開にうっかり現実逃避しそうになっていたウェイバーは己を奮い立たせて少女の説得を試みた。
「やっぱ保守的なんだね~」
「何がだよ! お前がおかしいだけだろ!」
 説得失敗。うすうす勘付いてはいたがどうも違う星の出身かと思うくらいに常識が一致しないらしい。大体どの時代に「好きですさあセックスしましょう」なんて文化があるものか! どこかにはあるかもしれないけど二十世紀末のイギリスにも日本にもそんなものはない! むしろ非常識だ!
「まあ嘘をついてるようでもないし、坊主、据え膳食わぬは男の恥だぞ?」
 ライダーは呆れたように笑うと、腰掛けていたベッドから降りた。
 つまり、ベッドは空けわたすからせいぜい励めということか。冗談じゃない。
「据え膳とか恥とか今関係ないだろ! 第一この女が隙をついて僕を殺さないとも限らないじゃないか!」
「おお、それも一理あるな」
「おお、じゃない! お前、それでも僕のサーヴァントか!」
 いい加減疲れる。なんで自分の周りには常識はずればっかり集まるんだ。
「私そんなことしないのに。あ、じゃあライダーにはそこにいてもらえば?」
「はぁぁあ!?」
 今度こそ顎が、以下略。
「私が少しでもおかしな真似をしたらライダー、あなたなら私なんて片手一本で縊り殺せるでしょ?」
「そりゃそうだが、いいのか?」
「いいも悪いも私はウェイバー君に悪いことしようなんて気、さらさらないし。気持ちよくはさせられるけど♡」
 きゃは、とでも笑いだしそうな顔に眩暈がする。
「いやちょっとまて、なんで僕とお前がせ、せ、セックス、する前提で話が進んでるんだよ」
「えっ、しないの? したくない?」
 絶対に口にはしないけれど、ウェイバーだって健全な少年でお年頃であと童貞だ。女体に興味がないわけはないし、彼の基準に照らして及第点を軽く突破する顔面偏差値の女の子(スタイルもなかなかいい)からお誘いされればホイホイ服も脱いでしまいたくなる。
 聖杯戦争の真っただ中で、相手が魔術師かつマスターじゃなければ、という前提つきだが。
「し、したいとかしたくないとかじゃなくて」
 とはいえ逃してしまうには大きすぎる魚のような気がする。ミルク色の肌も潤んだトパーズの瞳も、情欲にゆらめき少年を誘っている。
「私は、したいなあ?」
 色づいた林檎のような唇から誘惑の言葉がつむがれるたび、蜜のような甘い香りが鼻先をくすぐった。
「ボク、は……――っ!?」
 少し目を逸らしたのがいけなかった。やわらかい唇にとらわれて、ウェイバーは言葉も紡げない。キスされている、同意もないのに! と憤慨してみてもどうにもならない。どうにかする気にすらなれなかった。困惑と、わずかばかりの快感のほうが勝ってしまっている。情けないことに。ふわふわの舌でちろちろと上唇をくすぐられて、だんだんと変な気分になってくる。これではいけない。ライダー、とすがるように彼のいた方を見遣るがそこには誰もいなかった。霊体化したのだろう。気を遣っているのかわからないが薄情なやつめ!
「今余計なこと考えてるでしょ」
「っ、ふ――!?」
 不機嫌そうな声にびくりとした瞬間、ウェイバーの体は思い切り引っ張られた。倒れる、と思って咄嗟に突き出した両手は、ベッドのスプリングに受け止められる。きしむ音を聞きながら、あ、いかん、と少年は顔が蒼くなるのを感じた。自分の体の下に少女が横たわっている。これではまるで押し倒しているように見える……というか押し倒したも同然だ。いや違う押し倒すように仕向けられたのであって強いて言うなら押し倒させられた、ん? 押し倒させられられた? あれ?
 混乱しているウェイバーの頬を片手で撫で、少女は目を細めて笑った。
「キス、気持ちよかった?」
「そんなの、……っ!?」
 頬に当てられていないほうの手が、ウェイバーの下半身に触れる。
「おっきくなってるね」
 その言葉の通り、陰茎は半勃ち状態だった。キスだけで興奮しているのが恥ずかしくて、それを見透かされて笑われたのが悔しくて、ウェイバーはきっと彼女を睨んだ。
「どうしたの? 私、ウェイバーが感じてくれてうれしいのに」
「……」
 だんだん腹が立ってきた。なんで自分ばっかりこうもいっぱいいっぱいで、そのくせ彼女は余裕なんだろう。自分でもこの少女をひいひい言わせられるだけの経験とか技術(テクニック?)とかあればいいのに。と、ないものねだりをしても仕方ない。
「ねえ、もっとキスして?」
 それに彼女はどうやら自分にはそういうものは求めていないのだろう。彼女はただ自分を求めている。どういう理由なのかわからないけど、平凡な魔術師の自分を好いてくれているらしい。平凡、そう、自分でもうすうす気づいてはいる。虚勢を張ったところでウェイバー・ベルベットには何の才能もないということは。
 ウェイバーは身をかがめ、求められるままに口づけた。少女の唇は柔らかく熱く、甘かった。嫌なことを忘れるには十分なくらいに優しく残酷な罠に思えた。
 さっき自分がされたように、彼女の唇を舌で撫でてみる。冬の空気に乾燥した自分のそれとは全然違うなめらかな粘膜の奥を、のめりこむように求めてしまう。背中に回された少女の手が震えると、ウェイバーの中にさらに火がついたようだった。誰に教わったわけでもないのに、重ねあわせた唇の角度を変えて、より深くまでつながってしまう。もっと奥まで感じたい、もっとおぼれてみたい、もっと彼女のことが知りたい。
「ん、んぅっ♡」
「……っ、ふ」
 鼻からぬけるくぐもったため息がやたらと色っぽい。ウェイバーを熱っぽく見上げている目はうるうると輝き、言葉通りに五感のすべてを彼女に支配されている。
 興奮していた。キスしている最中にも血液が下半身に集まってむずがゆさに似た疼きを訴えている。
「ウェイバー、もっとぎゅってして?」
「あ、ああ……」
 甘えるような声音にドキリとしてしまった。触れるごとに溺れていくようだった。最初のほうこそ、「顔はいいのにな」くらいにしか思っていなかったのに、段々と彼女のやることなすことがたまらなくいとおしくなってきた。まさか暗示をかけられているのだろうか。ライダーが行動していないということは、その可能性は低いだろうけど。
 押しつぶさないようにそっと少女を抱くと、華奢な腕が背中に回される。そのまま何度か撫でられるとくすぐったさのほうが勝ってしまう。それでも心地よさには変わりはなかった。家族亡き後誰かに抱きしめられることは久しくなく、人肌のあたたかさは抗いがたかった。どちらがどちらに甘えているのだろう。もうどちらでもいい気がした。
「んふふ、ドキドキしてるね?」
「……悪いか」
「ううん? 私もドキドキしてる」
 少女はウェイバーの頭を抱え、胸元に耳を当てさせる。
「ね?」
 言うとおり、彼女の心臓もまたばくばくと跳ねていた。同じだな、と、つぶやいた自分の声音がなんだかうれしそうにも聞こえた。安心しているのかもしれない、などと馬鹿馬鹿しい夢想からそっと目を開けると、自分にはない胸のふくらみが呼吸のために上下している。唇も頬も指先も、脚もお腹もどこをとっても、女の子って柔らかいよな、と、抱きしめられたウェイバーはうずうずと更に熱が集まるのを感じた。それが態度にでも出ていたのか、ウェイバーの手は少女によって胸の上に導かれる。
「触りたい? いいよ♡」
 手のひらがその重みだけで沈むほどの柔らかさ。白い上着越しでこれなのだから、そのままに触れたらどれだけの柔肌なのだろう。
 ウェイバーは体を起し、少女の衣服に手をかけた。変わった服だと思う。胸を強調するように上下で留められたバンドのようなものを外し、ウエストのベルトを緩めても抵抗などされなかった。拒絶されたくないと怯えているのが馬鹿馬鹿しくなるほどに。
「妙な服着てるんだな」
 間が持たないウェイバーは、少女を抱き起し、その腕から上着を引き抜きながらそう口にした。
「変? 変だよねえ、私も最初に支給されたとき、どうやって着るのかわからなかった」
 外した首元のブローチは、幾何学模様、いや、アルファベットを模しているらしい。見たこともない意匠について考えても詮無いことだが、口ぶりから察するに彼女が好んで着ているわけではないらしい。
「支給? これ……制服なのか?」
「んー……まあ、そんなとこ」
 濁すような返事には満足できないが、ボタンを上から順番に外していけば白い素肌に喉が鳴る。繊細なレースが見えたが、下着だろうか。
「……脱がすぞ」
 完全に流されているのは自分でも理解できている。ウェイバーは眼前の肉欲に没頭していた。
 彼女の下着は白とピンクのレースやらリボンやらで丁寧に装飾がされている。貞操観念のゆるそうな言動のくせにずいぶんと清楚なの付けてるんだな、となぜか苛立たしく思う反面、それがなおのこと淫らにも思えた。
 下着の上から触ってみたくもあったが、どうせなら上も下も全部脱がせてしまおう。と、ウェイバーは先に黒いミニスカートのウエストをまさぐり、ホックとファスナーを外した。
「私も脱がせていい?」
 隙間から覗く白いショーツのフリルに生唾を飲みこんでいると、少女がウェイバーのセーターに手を伸ばしてくる。
「は? いいよ自分で脱ぐから」
「ええ~?」
 遮るようにウェイバーがセーターの裾に手をかけるとブーイングがとんだ。何が不満なんだ。
「男の服脱がすのがそんなに楽しいのか?」
「ウェイバーは私を脱がせるの楽しくなかった?」
「そりゃお前は女だから」
「ってことは楽しんでくれたんだ?」
 あっ。
 悔しそうな顔をしてももう遅い。誘導尋問にひっかかったウェイバーを楽しそうに見つめる彼女の手はすでにセーターを掴んでいる。
「じゃあ脱がせていい?」
 言い終わる前に両腕がセーターの中につっこまれ、背中の肌に触れた。都合抱きつかれるような格好になるので、ウェイバーの旨にふくらみが押し付けられる。
「……もう好きにしろよ」
 どぎまぎしたままのウェイバーの唇にかすめるように唇が触れた。それが離れたかと思うと脱がされるセーターに引っ張られるように両腕を上げさせられ引き抜かれ、ボサボサになった頭を彼は数度振った。何もかもされるがままだ。
「あのさ、なんでボクなの」
「何が?」
「……いきなりすぎるんだよ。初対面なのにさ、いきなり好きって、何? 一目ぼれってやつ?」
「そうなるかなあ」
 濁す口ぶりの真相はきっとウェイバーには一生わからないだろう。自嘲と同時に罪悪感に襲われながら、彼女はネクタイのノットを緩めた。
「ボクは別に、背が高いわけでもないし、体格だってその……それにさ、大体、魔術師としてだってボクは……」
 解いたネクタイを放り、シャツのボタンに手をかける少女の目を、ウェイバーはやはり直視できなかった。
 まっすぐに相手を見つめて行動できる彼女はどうしてこんな自分を好いてくれるのだろう。確かについ最近まで、自分は稀代の魔術師となるべく時計塔へと招かれたのだ、なんてことを言い聞かせるように信じ込もうとしていたけれど、さすがに聖杯戦争に参加して自分の未熟さを痛感した。ウェイバーはすべてを魔術に奉げてきた。その魔術で大成できないのであれば、自分が誰かに好かれるだけの理由など用意できるわけがなかった。
「自信がないの?」
「悪いかよ」
 彼女に苛立ちをぶつけてもしょうがない。こんなのは八つ当たりでしかない。わかっているのにそうしてしまう情けないウェイバーの頬を、少女はそっと包んだ。
「だいじょうぶ」
 そのまま額同士をぶつけて、鼻先が触れるような距離で少女は笑った。いつか誰かにこんなことをされたような、淡い記憶が浮かびそうになる。
「ウェイバーはすごい魔術師になる! 背も伸びるよ、そうねー、あと十年くらいしたら、ウェイバーの背は三十センチくらい伸びてて、それからすっごく素敵な紳士になってる! 私が保証する!」
「保証って……なんの根拠があるんだよ」
 少女は額を離すとにっこりと笑った。
「愛」
 馬鹿正直に打ち明けるわけにはいかないから、根拠ではないが本当のことを言ってごまかすしかない。
「……バカじゃないの」
 案の定ウェイバーは呆れとほんの少しの苛立ち交じりにため息を吐いている。ただ、その目元が少し赤い。
 彼は多分、孤独だったんだろう。家族を亡くしただけではなく、理解者もいない時計塔での日々はどんなに強がっていても寂しかったのではないだろうか。甘えてもいいよ、と、口を開きかけて、やめた。少年のプライドは多分、少女が想像するよりもずっと高いに違いない。甘えろなんて言われたら意地でもそうしないに決まっている。
「お前、変って言われるだろ」
 ウェイバーの両腕がウエストに回された。確かに筋力的には心もとないのが見て取れるが、鍛えればそれなりには成長しそうな骨格をしているように見える。その腕に抱き寄せられ、唇が重なった。
 優しい、というよりは幼いキス。舌を絡めて口腔をなぶるようなそれとはまったく異なるもの。ただ触れるだけなのにどうしてこんなにも昂ぶるのだろう。
 ほしい。彼が欲しい。快感を求めているのではない。肉体だけを欲しているのではない。
 ただ、彼に求められたかった。
「変でもいい。私、ウェイバーが好き。あなたがほしい」
「……ほんと、変なやつ」
 唇の上で交わされる会話はまったくかみ合わない。そのまま下着のストラップをずり下げられ、柔肌に触れられる。細い神経質な指の、想像していたよりもずっと高い温度に思わず声が漏れ出た。
「あ、ふぁ、んっ」
「ここ、その……感じるのか」
 ぴんと主張している先端を、ウェイバーはこれ以上できないくらい丁寧に捏ねている。悪態を垂れつつも面倒見がよく優しい誰かの片鱗を見た気がして、少女は体の奥が少し痛んだ。自分は今きっと、罪深く愚かなことをしているのだろう。
「ん……男の子もね、触ってたら感じるようになるよ?」
「ならなくていい!」
 しれっと自分の胸元に忍び込んできた手を叩きつつウェイバーは吠えた。大体いつの間にシャツを脱がしたのか。
「ええ、気持ちよくしてあげたいのに」
「厚意は受け取るけど乳首でよ、よくなるとか、恥ずかしいだろ」
「じゃあウェイバーにいじられて感じまくってた私、恥ずかしいってことになっちゃうじゃん」
 憮然とした二人の視線が真正面からぶつかる。
「お前は――、」
 先に逸らしたのはウェイバーだった。
「お前は、いいんだよ、女の子だから」
 もうこれ以上直視できない。そう言わんばかりに耳まで赤くしたのを見られたくなくて、ウェイバーは彼女の肩の上に顎を乗せるようにしてベッドに倒れこんだ。
「……かわいいし」
 肌の上でぼそっとつぶやかれた一言は、そのまま唇ごと柔肌に吸い込まれていった。キスするために顔を見られるのが嫌だったのだろう。その代わりにかウェイバーは少女の鎖骨に唇で触れ、ゆるゆると体の中心へとたどり始めた。
「あ……うぇいば、あ」
 かわいい。そんなこと言われるなんて思ってもみなかった。というのが正直な感想だった。さすがに今まで言われたことがない、というわけではないが、ウェイバーから言われるなんて予想外もいいところだった。ガラにもなく顔が熱い、嬉しくてしょうがない。思わず彼の頭に手を伸ばして、快楽に堪えかねた風にその髪を乱してしまっている。みっともないくらいにゆるみきった顔をしているだろうから、ウェイバーの顔が胸元まで降りていてよかったと思った。そのウェイバーの顔も、もしかしたら真っ赤なのかもしれないけれど。
 ちゅ、ちゅ、と、小さく音を立てながらウェイバーの唇が更に下っていく。少年にしては長い髪が肌にかかってくすぐったい。すでに片方の乳房は手のひらでこねくりまわされていたので、彼が何を求めているかはすぐにわかった。
「なめても、いいよ……」
 一瞬動きがとまったかと思うと、ウェイバーの唇がやわい先端にふれかかった。今か今かと待ち構える時間がもどかしく、「はやくして」などと余裕のないことを口走りそうになる。
「んっ、あ、ふぁ、あ」
 ぺろりと舐め上げられ、確かめるように上下の唇で挟まれる。強弱をつけて食むように唇がうごめいたかと思うと、その奥から伸ばされた舌にころころと嬲られ、少女はびくびくと背中を反らせた。口で愛撫されていない方は指先で同じように弄ばれている。
「あ、あ、ウェイバー、うぇい、ば、う、ああっ」
 ウェイバーの背中にまわされた指先に力がこめられる。耳に届く嬌声は甘く、それだけでウェイバーの昂ぶりを刺激した。自分とはまったく違う柔らかい肉体にのめりこんでいくのはどこか恐ろしいような気がした。これは止めようと思ってもおそらくは止められないことだろうから。
「は、あ、はぁっ……」
 顔を上げたウェイバーが口元をぬぐうと、惚けた顔の少女がこちらをじっと見つめ、同じように息を荒げている。何て顔してるんだよ! と、舌打ちすらしそうなウェイバーの前で彼女はふとももをきゅうとこすりあわせた。
「ウェイバー、した、さわって……?」
 ふとももを閉じたまま膝を立てるのは恥じらいのせいだろうか。ふっくらとした丸みのある恥丘を目の当たりにして、ウェイバーはごくりと喉を鳴らした。すでにウェイバーだって下着がテントを張っていてつらい。少女が片手で下ろそうとするのを手伝うようにショーツを下ろすと、下着と彼女の間を透明な糸がつうと伸びて行った。これはいわゆる、濡れているというやつだろうか。一言「触るからな」と断って指先で触れると、両足がびくんと震えた。
「んっ、んあ……」
「痛いか?」
「ううん、だいじょうぶ……もっと、触って」
 と言われても加減というものがわからないのでおっかなびっくり触ることしかできない。それでもぬるぬるした愛液を潤滑油代わりにこすりつけ伸ばすように触ると、彼女はか細い悲鳴のような喘ぎ声でウェイバーをさらに追い詰めた。
「ふぁ、あ、んっ、うぇ、いば、ぁ……あ、ん……」
「……すごい、濡れてる……感じたのか?」
 第一関節までてらてらと光っている指と、はあはあと身もだえている少女を見比べる。
「……ウェイバーにいっぱいさわられて、感じちゃった……」
 照れ臭そうに笑う彼女がどうしようもないほど愛おしく、欲しいと思った。ウェイバーだって下着の一部にシミができる程度には張りつめてしまっている。もうここまできたらいいだろう、と、隙間ができたふとももの間に手をかけて開こうとすると、一瞬だけ抵抗された。
「……恥ずかしいんだもん」
 結局開かれるままに従ったが、彼女は不可解そうなウェイバーに言い訳がましいことをぼやいている。
「……やめる?」
 お伺いを立てつつも、もう引っ込みがつかないことなどとうにわかりきっていた。やめろなんて言わないでくれ。みっともなくすがるような顔になっている自覚はある。それでも彼女がほしかった。
「ううん、やめないで、ウェイバー」
 手を伸ばして頬に触れる少女は、何もかもを受け入れるように笑っている。あまりにもあたたかで、それが今このときだけでなく、この先もずっと自分に向けられて欲しいと願ってしまった。
 ウェイバーは下着を脱ぎ、自身を少女の秘裂にあてがった。先端が熱い粘膜に触れただけで射精しそうになってしまう。
「入れる、から」
「ん……」
 片手はそれを支えるように、片手は少女の脚を抱えるようにして、ウェイバーはゆっくりと腰を進めた。
「う、わ……すご、これ、っ」
 体験したことのない快感に腰が砕けそうになる。うごめくような内壁の、まるで細胞の一つ一つに吸い付かれているような感触だった。
「あ、っ、あ、ウェイバー、あ……」
 挿入された快感にむしゃぶりつくように少女が身を捩って手を伸ばす。ウェイバーが応えるように身をかがめると、しなやかな両腕にすがりつかれた。泣き出しそうな顔、快感のためなのかそれ以外なのかわからない。ただ、目から耳元まで等しく朱に染めた彼女の頼りない痴態はウェイバーを煽るには十分すぎるほどだった。
「っ、バカ……お前、っ!」
 少女が震えるだけで内部がきゅうと締め付けられ、搾り取られるかと思うほどの快楽に見舞われる。それでも絶頂まで押し上げられるには程遠く、そうなるためにどうしたらいいか? という、答えのわかりきった問いを投げられたように思えた。答えなんて決まっている。ウェイバーは眉間にしわを作りながら腰をグラインドさせ始めた。
「あ、あ! う、ああっ、うぇいば、あ、んんっ、ふ、あ、おっき、ぃ……」
 甘い鳴き声がこぼれる唇をふさぐ。互いが欲しがるままに舌をねじ込み、華奢な少女の口腔を余すことなく味わう。その間もウェイバーの腰は止まらなかった。打ち付けるたびに全身がしびれるほどの恍惚が押し寄せ、もっと強いものをと求めてしまう。
「うぇいば、うぇいばぁ、んぁあっ、すき、ぃ」
「っ、ふ……う、ん」
 名前を呼んで渇望されることの心地よさ。ウェイバーは口を開きかけて、そういえば彼女の名前も知らないことに思い当った。今聞くのもなんとなく間がぬけているような気もしたし、とろとろになってしまった彼女がきちんと答えるかも怪しい。だいたい、これだけ盛り上がっているのに水を差したくなかった。
 ウェイバーは少女の唇を貪りながら、腰を更に引き寄せる。限界が近い。瞼の裏がちかちかとしはじめて、ああ、駄目だな、と、諦め交じりに少女をきつく抱きしめた。
「うっ、ぐ……っふ、あ、っ、クソ、だめだ、出る、イく、っ!」
 うめくようにして絶頂を迎えたのはウェイバーだけだった。少女はただ、自分の体内でびくびくと爆ぜるウェイバーを確かめるようにうっとりと目を閉じ、彼の髪を撫でていた。



たのしいバッドエンド


 じっとりと背中が汗で濡れているのがわかる。初めてのセックスは思っていた以上の疲労感をもたらしたが、同じように思っていた以上の快楽と、不思議なほどの充足感をくれた。その相手はウェイバーの背中を愛しむように撫でている。それがまた、さらに満たされるような心地にしてくれる。中性的とすら言える細い顎から滴り落ちた汗の珠が、荒い呼吸を繰り返す彼女の胸元に溶けていく。二人ともめいめいばらばらに呼吸していたはずなのに、いつのまにか同じリズムで息を吐きはじめる唇はごく自然に近寄って行った。
 指を絡めたままうっとりと目を細め、重なるかと思ったそのとき、
「こら坊主」
 野太い声が二人を引き戻した。誰何するまでもない、ライダーだ。いつの間に実体化したのか床に胡坐をかいて両腕を組み、ベッドの上の二人を半分呆れたように見ていた。
「んな、な、なんだよお前! もももうちょっと気を」
 そう言えば霊体化したとはいえ護衛のためにそこにいたのだった、と思い出すと顔から火が出そうになる。気をきかせるならもう少しの間霊体化して黙っててくれよと言わんばかりに睨みつけると、ライダーはため息交じりに苦言を漏らした。
「まあ童貞に言うのも酷な話だとは思うが、女一人満足させられんでどうする!」
「のがぁ!?」
「う、ウェイバー!?」
 ライダーのデコピンはそろそろ慣れてもきたが痛いものは痛い。相変わらず涙目で吹き飛ばされたウェイバーは、「どうして今こんなことをされなければいけないのか?」と表情で訴える。が、ライダーはマスターである少年を指差し、いっそ威圧的に申し付けた。
「ようし坊主、そこを代われ」
「え?」
「今度は余がその娘を悦ばせる番だと言っておるのだ」
 ぽかんとしたのはウェイバーだけではなかった。二人して、ライダーは一体何を言い出しているのかと呆けたまま、彼のやけにやる気に満ちた顔を凝視してしまう。
「娘、貴様満足しておらぬだろう?」
 ぎくりとした。確かに自分は一度も達してはいない。それでもウェイバーと結ばれ、彼が自分の中で果てたことで十分に満たされたとは思っている。いたのだが、ライダーに言い当てられてむずむずとこみあげてくるものがあるのも事実だった。
 ライダーの大きいだろうなぁ、そんなので突かれたら死んじゃうほど気持ちいいかもしれない。もしかしたらもうライダー以外じゃ満足できなくなったりして。それはだいぶ困る。でもこんな機会一生こないよね、据え膳食わぬは女も恥よね!?
 ……などとあれこれ考えながら口をつぐんでいる彼女の傍らで、ようやくウェイバーは声を上げた。仮にも自分を好きだと言っている女相手にそんな暴挙を許すわけにはいかない。
「ライダー! お前何を言いだすんだ!」
 悲しいかな貧相な全裸ではすごんでもなんの迫力もなく、ライダーはマスターの一喝など物ともせずに笑う。
「というのは半分は口実でな、お前たちを見ておったらこの通りいきり立ってしまったわけだ」
 彼が示す股座に二人の視線が注がれる。
「っ……!?」
「んなっ……なんだよその非常識なサイズは……!」
 二メートルを超す筋骨隆々とした体躯にふさわしいというべきか。ライダーの体格ならさもありなんと言いたくなるような逸物だった。むき出しの亀頭は赤黒く、張り出したカリのなんと凶悪なことか。陰茎自体の太さも、並の人間ならば片手でつかんだところで指と指とはつかないだろう。おまけにこの長さ、挿入すれば膣道を突きぬけて子宮すら犯してしまうのではないか。
 さっと青ざめかけた二人に、ライダーは不満そうに言い返した。
「非常識なものか。同じ穴から赤子が出てくるのだぞ?」
 確かに赤ん坊の頭とライダーのそれの大きさなど比べるまでもない。が、赤ん坊は生まれるときに産道を往復しません! ウェイバーは顔を真っ赤にしてどなった。自分を好いてくれる少女の代わりに。
「それにしたって限度ってものがあるだろ! そ、そんなの入れたらこいつ、壊れるに決まってる!」
「ウェイバー……」
 やだ、心配してくれるの? と、潤ませている少女の耳にまた別の不穏な申し出が聞こえる。

「ならば坊主が余の相手をするか?」
 
「――はぁぁぁぁあ!?」
「えっ、ライダーって男もイケるの?」
 絶叫と素朴な疑問。卒倒しそうなウェイバーはともかくどうも少女の方は肝が据わっているらしい。肝の小さい己のマスターは放ったままライダーは頷く。
「現代では廃れた風習らしいな。まあそれはさておき……娘のほうはまだしも、坊主、お前ではちと荷が重い気がせんでもないが」
「ぼぼぼぼぼぼボクをどうするつもりだよ!?」
 ライダーの視線がウェイバーの下半身に向けられている。男同士でまぐわうとなるとナニをどこにどうするのか? ウェイバーは仔細を知らずとも身の危険だけは確信して後ずさった。すっかり彼自身は小さく縮こまっている。
「だめっ!! ウェイバーは駄目!! ウェイバーを掘るくらいなら私を使って!!」
 がばりと起き上がった少女に抱きつかれて、ウェイバーは上半身を大きく揺らした。と、同時に、自分のために犠牲になろうとしている彼女の献身にキュンと胸をときめかせてしまう。なんだ、やっぱりいい子じゃないか。
 しかし少年の純情はすぐに打ち砕かれる。
「いくらライダーでもウェイバーのお尻の処女は渡せない!! 私がもらうんだから!!」
 ウェイバーは思わず白目を剥いた。
 処女? ボクは男だぞ!? お尻!?!?
 ライダーもライダーだが彼女も何を言っているのかわからない。
「もらうと言ってもお前にはついとらんだろう」
 ライダーはライダーで少女の体を検めるような視線をよこしてくる。当たり前だがそこに男性器などない。が、彼女はどういうわけか自信満々の顔で親指を立てて見せた。
「大丈夫、生やしてくれそうな人に心当たりがあるの。っていうかこんなことならつけてくればよかった……あー失敗した!!」
 別に根拠や確証があるわけではないが彼もとい彼女、いやどっちだったっけ? ともかくダ・ヴィンチちゃんならやってくれる気がする。今度聞いてみよう。聞いたところでもうウェイバー相手にはできないけど。
 ぶつぶつ口の中で何か呟きながらまったくわけのわからない後悔の煩悶に頭を抱えている少女をライダーは豪快に笑った。
「娘、貴様中々の好き者と見た。ではお前が相手をしてくれるということでよいのだな?」
「いいわ。ウェイバーの貞操のためだもの!」
 ぎゅっと抱きしめられたウェイバーは泣きそうだった。ていうか今の話だとそれいつか奪われるんだろしかもお前に!! そう叫びたいがうかつに何か言うとヤブヘビになりかねない。ウェイバーは少女がライダーの寝床に降りていくのを黙って見送ることしかできなかった。なんなんだよこの流れ!
「さ、さすがにこのサイズを一方的に突っ込まれるのは怖いから私が上ね! そこは譲らない!」
 床にしきつめられたマットの上に彼女は寝転ばず、ライダーに仰向けになれと言う。
「うーむ……ま、[[rb:女子 > おなご]]に乗られるのもまた一興か、構わぬ」
 征服王として何か思うところがあるらしかったが、ライダーは案外すんなりと横になった。相変わらず怒張は天を仰ぎ、期待しているのか時折びくりと身を震わせている。
「じゃあ、い、いくからね」
 背もあれば厚みも幅もある体はまたぐだけでも一苦労するらしい。少女は鍛え上げられた腹筋の上に手をつくとゆっくりと腰をしずめていく。
 ウェイバーはその光景から目が離せなかった。
 およそ常人サイズとは思えない男根が少しずつではあるが膣内に飲み込まれていく。濡れた粘膜の奥からこぷりと白いものが流れてきたが、おそらくウェイバーが吐き出したものだろう。ひどく扇情的な情景だった。
「う……っふ、あ、っく、キツ……」
 亀頭を収めたあたりでか細いうめき声が聞こえる。やっぱり無理じゃないかとウェイバーは慌ててベッドから降り、彼女の顔を覗き込んだ。
「ほ、ほんとに大丈夫なのか?」
 それが嬉しかったのだろう、彼女は力なく微笑みながら差し伸べられたウェイバーの手に頬ずりした。
「へ、いき、っ、だいじょぶ、だからっ、あ」
 言いながらもさらに腰が降りていく。ライダーの両手は彼女を支えるように添えられているが、無理矢理自身をねじ込もうとしているわけではないらしい。ウェイバーはとりあえず安堵しながらもこう考えた。もしライダーが彼女を傷つけるようなことがあったら令呪を使おう……こんなことに使うなんて馬鹿馬鹿しくて泣けてくるが。
「ふっ、う、んっ……ライダー、おっきすぎ……っ」
「そうは言ってもなあ」
 ウェイバーの内心を余所に二人は行為に没頭している。彼女が赤らんだ顔で苦悶しながら懸命に男根を飲み込もうとしているのは痛々しくもある、が、ライダーはその表情にかはたまた自身に与えられる粘膜の快感ゆえか、少しずつではあるものの余裕を失いつつあるようにも思えた。じっと少女の痴態を見ている目は細められ、何かを堪えるように軽く歯を食いしばっている。多分快感を、ひいては一思いに突き入れたい欲求を堪えているのだろう。
 自分でさえあれだけきゅうきゅうに締め付けられたのだから、ライダーはよっぽどいい目を見ているに違いない――いや別にうらやましいわけではない、断じてない。
 ウェイバーが見ている前でとうとうライダーの根元までが見えなくなった。ここまでくると単純に「女の体ってスゴイ!」という純粋な感動が先に浮かんでしまう。
「っは、はぁ、あ、はい、った」
 あは、と、笑う彼女の体がひくりと震えた。ライダーはまるで小動物を愛玩するように太い指先で顎を撫でてやる。
「うむ、見事! そのか細い体で余の逸物を受け入れるとは、賞賛に値するというもの。褒めて遣わそう!」
 ってことは入るって思ってなかったんかーい!
 ウェイバーは内心でツッコミつつもやはり二人から目を離すことができなかった。あれだけの剛直を飲み込んで、本当に平気なのだろうか。うっすらと目じりに涙を浮かべた少女が、おずおずと自分の下腹部を撫で始めた。
「あ、あは……♡ すごぉ……♡ ライダーの、おなかのなか、でっ、びくびくしてっ……」
 半分惚けた笑顔で口にするのは嬌声まじりのうわ言だった。ライダーが彼女の胎内で震えるたびに連動しているのだろうか、不規則に全身を打ち震わせている。しかし中に入ったのはいいとして、この先――つまり律動を開始して彼女は本当に大丈夫なのか? という疑念も拭えない。
 息を整えた少女はゆっくりと前後に腰を揺すり始めた。
「ふあ……♡ あ、おっき、い、これ、奥、あたって……んぅ♡」
 こつこつと最奥の天井に触れているライダーがじわじわと快感をもたらしている。並の人間相手では思い切り突き上げないと届かない場所へのゆるやかな刺激は、穏やかながらも確かな快楽。ほうと溜息をつきながらじっくり味わおうとする彼女を、しかしライダーはそのままにはしておかなかった。
「よぅし、では褒美だ。この先は余が貴様を愉しませてやろう」
 言うと、ライダーは細腰をがっちりと掴み、伸ばしていた両足の膝を立て床面を踏みしめたかと思うと猛烈な勢いで腰を突き上げはじめた。
「い゛っ!? あっ、やっ、ちょっ……と、だめ、それっ……あああっ!?」
 がっつくような激しい動きは当然細身の彼女には到底受け入れられるものではないだろう。体中をかき回されめちゃくちゃに犯されるな衝撃が休むことなく与えられる。
「らいだぁ、ああっ! ひぎっ♡ そんっ、こわれっ」
「どうした娘! 気をやるにはまだまだ早かろう!」
 ふうふうと荒い鼻息を漏らしながらライダーが檄を飛ばす。しかしウェイバーから見ても少女は快感だけに喘いでいるようには見えなかった。苦痛とも違う。では何か?
「うあっ、あああっ!! だめ、でちゃう、もれちゃ、いやっ、らいだ、やめ、おねが」
 出ちゃう? 漏れる? ウェイバーにはその言葉の意味するところなど見当もつかない。
「何を案じておる、存分に乱れ余を楽しませよ」
 相変わらず悦楽のみを追及するライダーはお構いなしに腰を突き上げる。ごりゅごりゅと最奥をえぐるようにされて与えられるものは快感でも苦痛でもなかった。
「いやぁっ!! ほんと、に、でちゃ、あ……やめ、うぇいば、みないで、見ないで!! いやっ、ああああーーっ!!」
 甲高い嬌声が上がったが断じて絶頂を迎えたのではない。
 しょわぁ、と、にじむようなかすかな音を立てながら、ライダーと少女の結合部が水浸しになっていく。一体何がどうなっているのかわからなかったウェイバーも、濃い茂みから漏れ出たものを見てようやく理解した。失禁してしまったのだ。
「がっはっは、さすがに堪えられなんだか。うむ、これを堪え切った女子はおらんからな!」
 圧倒的な質量を誇るもので膣奥を何度も穿たれればこうなる、というのはライダーもわかっていたらしい。身体の構造上そうなるほかないのだろう。しかしさすがにこうまでされるとは思っていなかったらしく、彼女はライダーの腰の上でぼろぼろと泣きじゃくるばかりだった。
「う……ううっ、ふ……見ないで……ウェイバー……」
「……」
「坊主、そう責めてやるな。こりゃ反射みたいなもんだからなあ」
 別に責めているわけではない。軽蔑しているわけでもない。そもそもライダーのほうが悪いのはわかりきっているし。けれどウェイバーは眼前の光景に言うべきことがまったく思い浮かばなかった。ライダーを叱責すべきか、それとも粗相してしまった彼女を慰めるべきか。いや、慰めると言ったって何をどう言って慰めればいいというのだ? 仮に自分が惚れた相手の前で故意ではないにせよ失禁などしたら恥ずかしくて死にたくなる。下手に言葉をかけられるより放っておいてもらったほうが数万倍マシだ。
 あれこれ思いをめぐらせながらもウェイバーは結局何一つ言えず、ライダーの呆れたような笑い声を聞くばかり。
「それに今ので貴様、おっ勃ててしまっていては人のことは言えまいて」
 さらには追い討ちのようなライダーの言葉に硬直するしかなかった。
「うぇい、ばー……?」
「み、見るな! これは、ちがっ」
 咄嗟に隠そうとしたが遅かった。見事に天を向いたウェイバーのそれは彼女も目にしたことだろう。なぜか満足そうに鼻から息を漏らすライダーが、双方を慰めようとでも思ったのか泰然と笑いかけてきた。
「何が違うものか。娘、先ほどの痴態はなかなかそそるものだった。未だ熟しきっておらぬ体がよもやこうも魅せてくれるものとはな。征服王たる余ですら蠱惑されんとしたのだ。坊主、何も恥じることはなかろう?」
 要するに二人ともそうなってしかるべきなのだ、元気出せ、とでも言いたいらしい。
「う、うるさい!」
 醜態を晒した挙句「まあしょうがないよね」なんて言われることの、どこが慰めなものか!
 ウェイバーがいっそ泣き出したくなった一方、彼女はライダーの言など聞こえないような顔で朱に染まった少年の顔を覗き込んだ。
「ウェイバー、私のこんな姿見て興奮したの? ウェイバー、私のこと嫌いにならない?」
 泣きじゃくった涙の跡が残る頬に、誰が酷い言葉をかけられるだろうか。というか前半は半分煽られているというか馬鹿にされているような気がしないでもないが……。
「……ならないよ」
 さすがに笑ってやるほどの余裕はなく、憤懣やるかたないような顔で応えてしまう。
「ウェイバー、ウェイバー、あ♡」
 それでも十分嬉しかったらしい。縋るようにウェイバーを求めようとする姿を見て、ライダーは不服そうに眉をひそめた。
「こりゃいかんなぁ。ふむん……よし、坊主、余の上にまたがって娘を慰めてやれ」
「は!?」
 相変わらず言い出すことの突拍子のなさは折り紙つきだが今回はその内容も意味不明なら具体的に何を指示しているのかもわからない。
 口を開けたままのウェイバーにライダーは、「彼女と向かい合うように自分の上に乗り、抱きしめるなりなんなりしてやれ」と言い渡す。
「そうでもせんとこやつ、貴様のほうに向かっていくだろう?」
 若干苦々しげだが目をかけている己のマスターと、彼を慕う少女をそれなりに気遣っている……のだろうか。そうでなければ征服王は無理矢理にでも手篭めにしかねないだろう。とにかくライダーの考えていることはわからなさ過ぎる。
「わ、わかったよ……っていうか二人も乗せて大丈夫なのか?」
「余を誰だと思っておる」
「……征服王サマだろ」
「わかっておるなら早うせんか」
 マジでなんなんだこの流れ。
 ウェイバーは胡乱な目でこうも考え始めていた。
『もう何も考えないほうがいいのかもしれない』
 渋々とライダーに跨ると、背後から豪快な笑い声がする。二人分の体重を一身に受けながらまだまだ余裕があるらしい。まあこの筋肉量ならそれもそうだろう、と、ウェイバーは尻や太ももから感じられるライダーの肉体に舌を巻いた。ウェイバーの体はなまっちろく細く、もう少し脂肪が多ければ女子のそれと言っても通用しそうなほどやわだった。
 その白い尻を見据えてライダーはどうも悦に浸っているらしい。
「うむ、結構な眺めだな!」
 少年少女を腰の上に乗せてご満悦の征服王はこの際無視しておく。目下ウェイバーが案ずべきは眼前の少女なのだが。
「……大丈夫か」
「うん、うんっ、ウェイバー♡ ウェイバー♡」
「……」
 いとおしげに名前を呼ばれてはいるが果たして彼女は現状を正しく認識しているのだろうか。ぎゅむぎゅむと抱きつかれれば体同士が密着し、甘い体臭に頭がくらくらする。ウェイバーはとろけきった双眸に見つめられ、ああもうなんでもいいやと自棄を起こしそうになった。
「ほれ、いつまでも惚けてはおられんぞ」
「う、わっ!?」
 がくん、と大きな揺れに襲われたかと思うと、次の瞬間思い切り下から突き上げられる。
「あ、あー♡ おくっ♡ らいだー♡ らいだーの、しゅごお♡」
 ばちゅばちゅと猛烈な突き上げを受けつつもいつのまに許容し始めたのか、彼女は歓喜に打ち震えながら喘ぎ乱れている。下まで降りてきた子宮口を無遠慮に穿たれる快感などこれまでに味わったこともない。
「っ、うく……あ」
 かすかに吐息を漏らしているウェイバーはそれを溢すまいとするのだがどうしてもできない。ライダーの律動のせいで少女の下腹部に密着した陰茎に刺激が与えられてこれはこれでどうしようもなく気持ちいいと感じてしまうし、抱き合った少女の甘ったるい悲鳴やら肌に触れている乳房のやわらかさやらのせいで快感がさらに加速してしまう。もう一つ付け加えるならば三人でこうもアブノーマルなセックスに及んでいるという事実に背徳的な悦びを覚えている。こんなことを知ってしまってはもうどこにも戻れないのではないだろうかと、恐怖交じりに期待してしまう。
「ふあ、あ♡ ウェイバー♡ おちんちん、あたってる♡ きもちいい?」
「っ、ばか、そういうこと、っ!」
 きっと睨んでみたところで快感に眉を寄せているウェイバーの言葉には何の迫力も説得力もなかった。
「ウェイバー♡ かわいい♡ んあっ♡ 私たち、二人とも、らいだーに、犯されてるみたい♡」
「き――気持ち悪いこと言うな!!」
「ぶわっはっは! なるほど言いえて妙だな娘! ならば二人まとめて存分に愉しませてやろう!」
 ライダーは気を良くしたのか穿つ場所を微妙にずらしながらピストンを激しくし始める。張り出したカリで肉襞をこそぐようにえぐられ、感じる場所も感じない場所もいっしょくたに蹂躙される。それすらがとてつもない快感で、背をのけぞらせながら少女は絶叫した。
「あっ、あ♡ らめ♡ きちゃう♡ んおっ♡ いっちゃ、いぐ、ぅ♡ らいだーので、いっちゃう♡」
 抱きついた背中はウェイバーの細いそれで、あれ? 今自分を貫いているのは誰だろうか、と、理性の消えかかった頭で考えてしまう。自分をなだめる様に二本の白い腕が抱き、自分を限界まで追い詰める二本のたくましい腕が腰を捉えて放さない。
「ん? どうしたもう限界か? まあよい、余は一度ならず何度でも貴様を悦ばせてやろう」
 そら、イけ。と、ライダーは容赦なく少女を攻め立てた。つながっている秘部からとめどなく溢れ飛び散る体液と、ばちゅんばちゅんと響き渡る淫靡な水音。それらを引き裂くような悲鳴とともに彼女はとうとう快楽に屈服した。
「っ、ひっ♡ おくっ、おくすごぉ♡ だめ、も、ぉ、いく♡ ――ひああああッ♡」
 絶頂の瞬間、ウェイバーの背に回された腕にぎゅううと力が込められる。少女の細腕と思えないほどのそれに、ウェイバーは驚嘆しつつ興奮を禁じえなかった。
 今、イったのか。これが女の絶頂なのか。
「あ♡ あ、う……♡」
 びくんびくんと大きく震えながらだらしなく荒い呼吸を繰り返し、ぐったりとその体をウェイバーに預けている。そんな姿を見せられて黙っていられないのは、ウェイバーだけではなかった。
「応、呆けておる場合か。そら、まだまだ終わらんぞ!」
「ひぎッ♡」
 再開された律動に、弛緩していた少女の体が敏感に反応している。常識外れの大きさの陰茎に一突きされるごとに理性は打ち砕かれ、片っ端から快楽のなかに沈められる。
「いっ♡ あ、あー♡ いく♡ またいっちゃ、も、むりぃ♡」
「っ!?」
 思わずといったふうに抱きつかれたウェイバーの陰茎が下腹部に圧迫されている。汗と体液でどろどろになった肌の間でぬちぬちともどかしい刺激を与えられ、物足りなさに声を上げてしまう。
「う、あ……、っ」
「ウェイバー……おちんちん触ってほしい?」
「な、ばか、そ……いっ!?」
 動揺してろくな返事もできないうちにしなやかな指に握りこまれ、ウェイバーはびくんと体を震わせる。興奮の渦中にあるライダーは二人の様を見て口元を緩ませた。
「娘、我がマスターを愉しませてやってくれまいか」
「わかったぁ♡」
「んなっ、馬鹿何言って、っあ、ああっ」
 他人に触られてたまるかと抵抗しようとしたウェイバーだったが、ゆるゆると上下に扱かれてはそれもかなわない。親指で裏スジをなぞられ、時折鈴口を掠めるようにされ、ウェイバーの陰茎は正直に打ち震えていた。
「ウェイバー、おちんちんびくびくしてる♡ 気持ちいい? あは♡ こうしてるとライダーにずぼずぼされてるみたいだね♡」
「やめっ、ふあ、ああ、クソッ」
 気持ち悪いからやめろといいたいのに、口からは喘ぎ声しか出てこない。そのうち先端からは先走りがにじみ出て、扱く手指の隙間に入り込みねっとりとした音を立て始めた。
「ほらほら先っぽ濡れてるよ? 女の子にちゅこちゅこ手コキされて気持ちいいでしょ♡」
「あっ、うあっ、き、きもちい♡ う、っぐ、んんっ♡」
 呻きながらも享楽をむさぼることをやめられないのか、ウェイバーの腰がひくひくと小刻みに動き始めていた。悔しい。こんな屈辱的な行為でひいひい喘がされるなんて!
 満足しているのは少女とライダーだけだろう、と、思っていたら、ライダーは物足りなさげに唸る。
「ふーむ、どうもこの体勢だとやりづらいのぅ……よし」
 何が起こるのか、と、身構える暇もなかった。
「ふえっ!?」
「うわっ!?」
 二人の視界がひっくり返る。ライダーが上半身を起こし、そのまま二人まとめて床に押し倒したのだ。
「うむ、これでよい」
 ライダーは少女の膣に挿入したままだが、彼女の上にウェイバーが覆いかぶさるように伏せているので見ようによってはウェイバーが犯されているようにも見える。というか少なくともウェイバーはそういう気分だった。
 勘弁してくれ――
 という彼の悲痛な(内心の)叫びもなんのその。
「ゆくぞ二人とも!」
「ひっ!?」
「っ♡」
 恐怖に怯えるもの一名、期待に胸を膨らませるもの一名。それぞれをほとんど無視したまま征服王は蹂躙を開始した。
「うああああああっ♡」
 先ほどまでとは比べ物にならない。一突き一突きが稲妻に打たれたような強烈な衝撃となって全身に襲い掛かる。頭からつま先まで貫かれ、体の内側から作り変えられるような圧倒的ないっそこれは、暴力。服従するしかない、こんなの、抗えるわけがない。
「ああっ!! らいだぁ♡ しゅごい、なか、ぜんぶ、らいだぁでいっぱ、ひいっ♡」
 朦朧としてきた意識の中で、内側をめちゃくちゃにしていく征服王と、そのマスターたる少年の昂ぶりが柔肌に押し付けられているのだけがわかる。ウェイバーを握っていた少女の手はひっくり返されたときに外れてしまっているが、今少年と少女は互いの指先を絡め、等しく快楽の並に溶けようとしていた。
「う、ぐっ、ライダー……!」
 ウェイバーは複雑な気持ちだった。真下では乱れに乱れた少女を感じるが背後からはむくつけき大男が下半身をぶつけてくる。彼の怒張は別にウェイバーのどこにも触れてはいないのだが、燃えるように紅く猛々しいライダーの陰毛が尻に当たるたびに名状しがたい気分になる。
 ほんとに二人まとめて犯されてるみたいじゃないか!!
 だというのにウェイバーの陰茎は一切萎える気配を見せない。畜生、これじゃ変態じゃないか。泣きたくなるウェイバーは縋るように少女の唇を求めた。こっちに集中しよう。柔らかくて甘くてかわいい女の子のことだけを考えよう。と。
「ぷあっ♡ うぇいば、んっ♡ ん、ふっ♡」
 ほう、と、ライダーは感心した。ウェイバーに唇をむさぼられた少女の粘膜が、途端にうねるように締め付けてきたためだ。セックスで絶頂を与えることはできなかったがこれはなかなか、やるかもしれない。それにライダーとてそろそろ溜まりに溜まったものを吐き出してしまいたい。そう思っていた矢先だったので、きゅうっと締め付けられるのは願ったり叶ったりだった。
「んむっ!?」
 胎内の剛直がさらに大きくなった。それをまざまざと感じさせられ、思わず目を見開いてしまう。
 ライダーの絶頂が近い。おそらくこの征服王はこのまま中に放出して果てるだろう。その体躯に見合うだけの、大量の子種を。
(ッ♡ そんなの死んじゃうかもしれない♡ おなかにいっぱい、びゅーびゅー出されたらもう……っ♡)
 想像しただけでぎゅわ、と、いっそうきつく内部がうねる。
「うーむ、こりゃ……なかなか……!」
 舌を巻くようなライダーの声が上ずっていた。まったく意図しないところで互いを高めあっているらしい二人の間でウェイバーも限界を感じ始めていた。自分の体重と少女のまろやかな肌に挟まれた陰茎がはけ口を求めぱくぱくと喘いでいる。手では触れてもいないのに透明な雫はたらたらととめどなくこぼれ白い肌を汚していた。このまま吐き出してもっと汚してみたい。細い体を抱き唇をむさぼりながらウェイバーは快楽だけに集中する。
「んあっ♡ ふうっ♡ う、ぐ♡ またイ、くっ♡ んっ、う♡ ふっ、ぅ♡」
「あ、ああ、クソッ、出ちゃ、う、いく、っ!」
「――!」
 誰も彼もがめいめいに喘ぎ、呻き、絶頂を訴える中、まずライダーが、もはや言語化できない雷鳴のような雄叫びを上げて果てた。
「あーーッ!! う、そ、こんな……ひっ!?」
 恐ろしいほどの勢いで叩きつけられる白濁を、魔力量という補助的な感覚をもってして少女は理解した。信じられない、考えられない、けれど現実。
「ひぅッ♡ イぐ、う♡ らいだぁの、せ、せーしで、い、イくうううう♡」
子宮の内側に激流として押し寄せるそれが強烈な刺激となってびりびりと全身を駆け巡り、彼女もまたとてつもない絶頂に押し上げられた。ぷぴゅ、と、尿道から潮を噴きながらかくかくと痙攣する体につられるように今度はウェイバーがその精を吐き出した。
「う、あ、ああっ、ふっ、うぐッ――!」
 勢いよく飛び出したものの二人分の皮膚に阻まれたために精液はにじみ出るように腹の上に広がっていく。腹の上でびくびくと余韻に震えるウェイバーを感じながら、少女は呆然とするしかなかった。
魔術師とサーヴァント双方の魔力を宿した体液にまみれたセックスは、かくも心地よいものだったのか。もう抜け出せない。知ってしまったのだからこれ以外で満足なんてできない。
「んあ……♡」
 やや萎えた肉棒と膣の隙間から、ごぷりとライダーの精液が流れ出てくる。どろりとした粘度の高いそれは、少女の正気を失わせるのに十分な量だろう。
しかし達したと言うのにライダーはそのまま動かない。怪訝に思ったウェイバーが息を荒げながら振り返り、少女もまた視線だけでライダーを見上げる。ライダーはにんまりと笑っていた。
「ん? まだまだ余は満足しておらんからな」
「お前……」
 つまり、一回では終わらないというわけだ。
「なあに、夜はまだ長い。足腰立たぬまで可愛がってやろう」
 舌なめずりをするライダーと、呆れたようなウェイバーを視界に捉えながら少女は享楽の予感にぶるりと震えた。
ああ、自分はもう戻れないところまで来てしまったのだろう。
 目を閉じれば脳裏によぎる親しい二人の幻影に、もはやそっと懺悔するほかできなかった。

 先生、マシュ、ごめん。
 私、ここから帰れないみたい――♡