悪ふざけがすぎまして

「一応聞いておくが、何が目的だ?」

 ロード・エルメロイ二世はその秀麗な眉目を不愉快そうにしかめ、こめかみのあたりを長い指でゆっくりなぞっていた。話しかけた先は目下擬似サーヴァントである彼のマスターであり、時に教え導く対象でもある少女だ。
 二人の間にはティーセットと、美しい断面のキューカンバー・サンドウィッチがある。清く正しいイングリッシュ・アフタヌーンティーを挟んでいながら漂う空気は極めて不穏。ついでに言うなら、そのティーカップの中からは異臭が漂っている。
「何が目的と言われましても……」
 少女、藤丸立香は困ったように肩をすくめた。
「では君は特になんの目的もなく人のカップに薬を盛ったと言うのか?」
 ああん? とでも言い出しかねない睨みにはさしもの立香もごにょごにょと言葉を濁すしかない。
「やー、目的は、まあ、あるっちゃありますけどお……」
 さすがに立香とて伊達や酔狂やその場のノリで一服盛ったりはしない。そもそもこれは生命に危険を及ぼす類の毒などではない。端的に言うとカップの中には媚薬入りの紅茶がなみなみと注がれている。もちろん、エルメロイ二世に供するカップにだけ、だ。
「強いて言うなら乱れに乱れてわたしを求める先生が見たかった……とか?」
「聞くな」
「ごめんなさーい」
 お怒りである。
 名にし負うロード・エルメロイ二世はお怒りなのだが、怒りの対象がちょっとズレている。
「盛るなら対象に悟られないように匂いくらいは消せ。色も変わっている。大体薬の類いを盛るなら味がかわってもわかりづらいものに入れるものだ」
 この通り、媚薬を盛ったのが気に入らないのではなく、やり方がいかんとお怒りなのである。それはそれでどうかと思うし、なんだかんだ言ってこの人も魔術師なのだなと大変微妙な気持ちになる立香だった。
 そういうわけで彼はまだカップに口もつけていない。鼻先に漂ってきた覚えのある異臭のせいで立香の計画は見事ご破算になってしまった。
 そう思っていたのだが。
「君は本当に最終的なところで詰めが甘いというか、まあそもそも全体的に未熟としか言えないのが実情だが……未熟なら未熟で多少工夫をしてみるとか、考えたりはしないのか?」
「うーん……わたしそういうの苦手だし!」
 体育会系の自覚がある立香には権謀術数は大の苦手で、反面座学が不得意な分、体術の類はそれなりに筋がよかった。今回だって仮に力技で襲って目的が達せられるならそうしている。
 エルメロイ二世はこれ見よがしに長い溜息を吐く。教え子がこんなにアホだと思うとそれもむべなるかな、だろう。
「こういう注意をするのは一度や二度ではないと思うがね」
「そーですね」
「君は言われたことを覚えて次に生かすこともできないのか?」
「……」
 和やかなティータイムは一転、恐怖のお説教タイムに変わる。どんどん冷たくなっていく声色に、さしもの立香も顔色が悪くなってきた。やっぱり正直に言わずに「サーヴァントにも媚薬が効くのか試したかったんです!」とでも言っておけばよかったか……と舌打ちを堪えていると、彼が軽く鼻を鳴らすのが聞こえた。
「よろしい。言ってわからんのなら直接教え込む」
「へ?」
 直接って何??? と、思わず顔を上げた立香が見たのは、カップの中身を一息に煽るロード・エルメロイ二世の喉だった。
「あ、えっ!? ちょっと先生!? 何してるの!?」
 すわご乱心かと腰を浮かしかけるが、冷めた紅茶をごくごくと飲み下す喉にどうすることもできはしない。
「……先生?」
 自分が調合し盛っておいてなんだが大丈夫だろうか? と、立香はおそるおそるに様子を窺う。その場で倒れ込むようなことはないし、特に変わった様子もなさそうだった。ただ、口の端に残ったしずくを舌で舐めとる仕草は無駄にエロかった。というのは立香の弁である。
「うん……いや、不味いなこれは。紅茶に霊薬は混ぜるものではないぞ。大体君、試しに飲んでみたりはしなかったのか?」
「え? いや、試飲とかは特に……っていうかやっぱり効果は……」
 飲み干したはずなのに彼の様子は至って普通だった。
 ちなみに今回ご紹介する商品は特異点のどこかでロード・エルメロイ二世が使用した「性的興奮を促すフェロモン」の液体版、レシピは黙って借りてきたのでところどころ解読不可能なところは適当に調合した上なんと藤丸立香ブレンドで効力のほどは未知数。ゆえに何の変化も効果もなかったのだろう。仮ににおい等でばれずに飲ませることに成功したところで、どのみち結果は同じだったのだろうかと落胆する立香を、エルメロイ二世は目を細めて見つめた。
「……」
 口元を手のひらで覆うようにして、何やら考え込むような態度。これはお仕置きのやりようを熟考しているに違いない、と、立香は戦々恐々とするほかない。いやはやどんな無茶ぶりがされるのだろうか。魔導書十冊書き写しとか、錬金術の調合実験反復五十回と効果比較表作成とか? いずにせよ体育会系に頭脳労働とかちまちました作業なんかはさせないでほしい。
「お手柔らかにお願いしますぅ……」
 半泣きで頼み込んでみたが、言ったところで無駄だろう。
「いや、加減はできそうにない」
 ほらやっぱり。
 立香は弱り切った顔で眉を下げるが、ふと違和感に気づいた。無理難題を言い渡されるほうの自分はともかく、なぜ言い渡す方の彼まで困った顔をしているのだろう?
「……立香」
「はい?」
「先に断っておくが、」
 どうにも歯切れが悪いし、気まずさを気取られないようにしているフシも見受けられる。立香には何がなんだかわからないが、エルメロイ二世は大きく息を吐いた。何かを決心したような顔だ。
「媚薬を盛るくらいだったんだから、多少乱暴にされてもいいんだろう?」
「……は?」
 一瞬、何を言っているのかわからなかった。目を点にした立香は思わず椅子ごと後ずさる。本能的な恐怖のために。
「何、お前のことだからどうせ大した効果などあるまいと踏んでいたが……」
 まさか、こんなしょうもない場面で調合が素晴らしく上手くいってしまったのだろうか。いや、仮にそうだとして、
「……先生なら押し流せるんじゃないの……?」
 化学物質ならばともかく魔術的な霊薬由来なのだから、体内の魔力循環を大きく加速すれば毒を押し流すことは一応可能だ(と、聞いた)。立香の貧弱なそれでは無理だけれど、今のエルメロイ二世ならばそんなことは朝飯前だろう。
 エルメロイ二世は「ああ」と頷く。予想が当たっていたのはいいが、どうにも「当たっているだけ」にしか思えない。
「無論可能だが、今回はやらない」
「はあ!?」
 何をトンチキなこと言い出すんだこの人は……と、虚をつかれた一瞬、エルメロイ二世の手が立香の両腕を絡め取った。
「制作者が試飲もしていないというから、私が臨床実験の被験者になろう」
 ぞわり、と、背筋が粟立った。どうやらこの御仁、媚薬のせいでやや乱暴な性格にでもなったらしい。
「いや……あの、けっこうです……」
「遠慮するな。というか、そう仕向けたのはお前だろうに、なぜ今更逃げる?」
 椅子を引こうにも背後には無慈悲に白い壁しかない。
「だ、だって先生、こわ――!?」
 舌打ちが聞こえたかと思うといきなり抱き上げられる。何をするのかなんて馬鹿なことは聞けなかった。向かう先には殺風景なベッドがある。案の定というか、確かにこうなることを意図してはいたのだがいざなってみると悪い予感しかしない。
「あの、あの、」
「なんだ」
 いらだちを含んだ目に、「やめてくれ」なんて言っても無駄な気がした。せいぜい舌打ちされるのが関の山だろう。ただ、一つだけ教えて欲しかった。
「せ、せめてどうしてこんなことするのかだけでも……」
 なんとなく、予想はつくし、そもそも彼も口にした。
「お仕置きというやつだ。軽率な行動が何をもたらすか、その体に直接教え込んでやると言っている」
「ひゃっ!!」
 冷徹とも言えそうな声音にぞくりとする間もなく、立香は乱暴にベッドの上に転がされた。いつもなら優しく丁寧に触れるというのに……。立香は悲しめばいいのか怒ればいいのかわからなかったし、どこか期待に胸を高鳴らせている自分も否定できなかった。
 横向きに転がったところから起き上がろうとすると衣擦れの音が聞こえる。ジャケット、ネクタイ、順番に解かれていったものが床に投げ捨てられたかと思うと、今度は立香の腰が両手で掴まれた。
「ふえっ!?」
 そのまま引っ張られて、四つん這いのような姿勢にされる。いきなり何をと背後を振り返ると、ベルトが緩められ、スラックスの前が開かれるのが目に入った。
「あの……まさかいきなりつっこんだりとかしないですよね……」
 願望混じりの声が震える。
「安心しろ、多少は慣らす」
「たしょ、わっ!?」
 多少って、と、言いかけた立香のスカートが捲られ、下着ごとタイツを引き下ろされた。ふとももの中程でもたついているのも、性器も後孔も丸出しになっている羞恥にくらべればなんのことはない。寒気すら感じる理由は敏感なところが外気にさらされたばかりではないだろう。
「歯止めがきかなくなった男がどういうものか、お前は知らないだろう?」
「しら、え? ひぐっ!?」
 何か水音のようなものが聞こえた、次の瞬間にエルメロイ二世の指が膣内にねじ込まれた。ややぬるついているのは唾液だろうか。ああ、先ほどの水音は指を口で濡らしたからか。ぐにぐにと内側で動かされるものを感じつつ、立香はそう推測した。
「っふ、あ……っく……うぐっ……」
 まったく濡れていない性器を蹂躙する中指は圧迫感しかもたらさない。それでも、知り尽くされたイイところを刺激されたら……と、涙を堪えるようにして待っていたのに、無情にも指は引き抜かれる。それがどういう意味なのか、なんて、考えるよりもさきにそれがぴたりと当てられ、
「や、ちょ、待って、」
「一応、すまん、とは言っておこうか」
「まだ――ああああっ!!」
 一息にすべてを押し込まれる。
「お……あ……ふ、ぐうっ……」
 裂けるような痛みなどお構いなしに腰が突き出される。その動きのどれをとっても、快感なんてみじんもない。だというのに彼は何が楽しいのか。満足そうに息を吐く。
「きついな……」
「んあ、あたりま、え……う、ひど、い……」
「ひどい? 自分のことは棚に上げてよくも言う」
「だ、って、こん……いきなり、あ……っく……やっ……」
 がくんと両腕が崩れ落ちて、腰がさらに後ろに突き出した姿勢になってしまう。恥ずかしさでどうにかなりそうだと言うのに彼は気遣ってもくれやしない。
「あ、あ……ひぃっ!んあ、あ……んっ……」
「濡れてきたな、立香」
「ちがっ! だめ、ぃっ、やあっ……」
 乱暴にされて感じているのかと言われた気がして、必死に首を振るのだが体は裏腹にほぐれていく。ぬちゃぬちゃと淫らに結合部が濡れそぼり、そのうちシーツにはシミができるだろう。
「ふうっ、う、ぐ、なんか、いつもより、おっき」
 しばらくは体勢のせいかと思っていたのだが、どうにも膣内で暴れるそれがいつもより大きいせいに思えてくる。竿の中程がより張り出しているのも、カリの部分がぐりぐりと内壁をこそいでいくのも敏感に感じ取ってしまった。
「お前の薬のせいだ……我慢しろ」
「やだぁ、せんせ、おっきい、いい……ああっ!」
「なんだ、気持ちいいのか?」
「わかんな、い、う、っく」
 根元まで突き入れて、全部抜いてしまうほどに腰を引く、それの繰り返し。立香のいいところなどお構いなしに自分の快楽だけを追い求める動きには普段の優しさなどまったく感じられない。おまけに本人は媚薬のせいで獣のようにふうふうと荒い呼吸を繰り返しているものだから、まるで知らない誰かに犯されているようにも思える。
「やあっ……あ、あ……んんっ! だめ……」
「何が駄目、だ。ぎゅうぎゅうくらいついて、はなさんくせに」
「ふ、うっ……ひぃっ! あ、あ……あっ……」
 エルメロイ二世の言うとおりだった。開きっぱなしの口の端から唾液をとろりと流し、立香は快感に喘ぎ始めていた。下半身はひくひく震え、性器はとろりと濡れている。食らいついている、と、言われたが、どちらかというとしゃぶっている、と言う方が適切なほどに。
「やだ、やだやだっ、おっきい、きついよぉ」
 それなのに気持ちよくてしょうがない。媚薬のせいで太さも堅さも増したそれにぐちゃぐちゃにかき回されて、粗雑に抱かれて、なのに気持ちよくておかしくなりそうだった。
「っく……っふ、あ……あ、またっ、おっきくっ」
 ぐうっとさらに押し広げるように体積が増す。絶頂が近いのだと知って、立香の内側がぎゅむっとうねった。ねだるような媚態は自分でも恥ずかしい。それでも一度達してくれたなら元の「先生」に戻るだろう。そう思って、あるいはそう願いつつなんとか顔を後ろに向けようとすると、視界がふっと暗くなった。
「え――」
 彼が覆い被さっている。熱のこもった目と一瞬視線が交わる、片手をぎゅうと握られてもう片方の腕は密着するように腰を引いている。途端、体の奥から痺れるような悦楽が湧き出て、つむじからつま先までを駆け抜けていった。
「――立香」
「~~っ♡」
 自分は馬鹿なんじゃないか、と思った。
「……っは、あ……♡ うそぉ……♡」
 たかだか名前を呼ばれただけで、イってしまった。悦ばせようなんてこれっぽっちも考えていない荒々しい抱かれ方なのに、その一言に込められた愛しさを感じただけでイってしまった。下腹部がうずいている。何をほしがっているのかなんて、言うまでもない。
「……は、あ、立香……っぐ、出すぞ」
 食いしばって堪えるような低い声と同時に一番奥まで貫かれて、吐き出される。
「いっ……あ、はぁ♡ んっ♡」
 どくどくと流れ込んでくる熱い精、欲しかったものを与えられて立香の内壁は歓喜に震えた。しゃぶりついてうねり、うごめき、逃さぬとばかりに蠕動する。男の呼吸に合わせてびくびくと跳ねていたそれはやがて柔らかく萎えるはずだったのだが、
「……へ?」
 それは堅さを保ったまま一向に力を失う気配もない。まさか、まさかと思っているうちにエルメロイ二世の呼吸は整ってしまう。それが何を意味するのか。立香にだって容易に想像がつく。現に腰に回されていた腕は腹から胸のほうへと這い上がり、見えもしない立香の制服を器用に解いていった。
「あの、先生、もしかして……」
 ばちん、と、黒いバンドが外され、胸元は荒々しくまさぐられる。
「やっ……っああっ!」
 ぎゅむ、っと先端をつねられて声が上がる。インナーも下着も暴かれていないのにすでにぷっくりと形をあらわにしていた乳首は敏感だった。
「せんせ、や、んっ……なんで、」
「どうしても何も、一度や二度ではおさまらんようだ」
「……っ♡」
 恐怖と快感への期待とが入り交じって体がうずいてしまう。
「半分は自業自得のようなものだからな、諦めて付き合え」
「ひぐっ♡ あっ、あああっ♡」
 また、抽送が始まる。さっきと違うことと言えば、ばちゅばちゅと淫猥な音が聞こえることだろうか。四つん這いのまま、立香はつながっているところを見ようと首を動かした。濃厚な青臭いにおいが鼻につく。吐き出された精液と自分の体液がそこからこぼれてシーツを汚しているに違いない。残念ながら見えはしなかったが、じゅぼじゅぼと抜き差しされる音と、肌同士がぶつかる音は想像をかき立てるに十分だった。
 なんて、いやらしい。
「はーっ♡ う、ぐっ♡ やぁっ♡ あああっ♡ おかっ、わたしっ♡ おかされてるっ♡ せんせ、に、むりやりっ♡ むりやりされてるみたいっ♡」
「人聞きの悪いことを言うな。無理矢理媚薬を飲ませようとしたのは誰だ?」
 どちゅん、と、奥が穿たれる。
「ん、ぎぃっ♡ わたしれすぅ♡♡ ごめんなしゃいっ♡」
 引きつった声。のけぞった立香は涙やら唾液やらで顔をぐちゃぐちゃにしていた。その頬に舌を這わせ、エルメロイ二世は立香の上体を抱き起こす。
「あーーっ♡ これ、ふか、あ♡ おくっ、おくまできちゃっ♡ んお、っ♡」
 膝立ちのまま後ろから貫かれるような体勢で立香は絶頂した。がくがくと身を震わせるのを後ろから恍惚の目で眺め、エルメロイ二世は耳元に唇で触れた。
「望みが叶った気分はどうだ?」
 びくん、と、もう一度立香の体が跳ねる。
「しゅご、お、い♡ こんなの、おかひくなるっ♡」
 とろんとした目ですがるように見つめられて、エルメロイ二世だって理性が飛んでしまいそうだった。それを悟られないよう、懸命に平静を装って口元をゆがめる。
「嫌か?」
 誘導尋問に対して立香はぶんぶんと首を横に振る。
「いやじゃないっ♡ せんせいとせっくす、きもちいいっ♡ もっともっとするっ♡ もっときもちよくなりたいっ♡」
 呂律が回っていない理由など明らかだった。エルメロイ二世の体内を巡っている媚薬が性交――粘膜接触を通じて立香にも影響を及ぼしているのだ。耐毒スキル(仮)を持っていても、自分が調合した薬は毒とは認識できないのかもしれない……などと、どこか考察を巡らせてしまうあたり自分もなかなか業が深いものだとエルメロイ二世は自嘲する。
 ともかく現状、彼女の力量では媚薬を無効化することもできないだろうし、そもそも自分まで飲まれていることすら気づいていないかもしれない。おまけに一定量が浸透すればそこでストップがかかるわけでもないので、この先立香の感度は増す一方だ。
「そうか」
 何が嬉しいのかわからぬまま、彼は後ろから立香を羽交い締めするように抱き、突き上げる抽送を再開した。
「んあああっ♡♡ あーーっ♡ らめっ♡ ひゃうっ♡ いまっ、いまイったばっかりなのぉ♡ イっちゃ、イく、またイく♡♡ むりぃ♡ んぎっ♡ きも、ち、い♡」
 絶頂したばかりの立香が、また絶頂する。終わりのない快感は恐ろしい。なにがって、慣れていくのが怖いのだ。このまま何度も何度も押し上げられて、普通のセックスじゃイけなくなってしまったらどうしよう、なんて考えてしまう。まだそのくらいの余裕があるのを看破されたのだろうか。
「立香、っ、どこに出してほしい?」
 ややうわずった声でエルメロイ二世が尋ねる。これもまた誘導尋問だなと自嘲しながら、それでも淫らに求める言葉が欲しい。これでは媚薬を盛った立香のことを悪しざまには言えず、少しだけ居心地が悪い気がした。
 立香は片手で下腹部を撫で、甘えるように首をひねってエルメロイ二世を見上げる。
「なかっ♡ なかにだしてっ♡ ほしいの♡ せんせいのせーし、ちょうだい♡」
 ぎゅわぎゅわとうねる膣がまるで別の生き物のようだった。媚薬のせいなのか、それとも。
「わかった、っふ、ん、ああ、出る、っぅ、は……っぐ!!」
 もはや考える余裕はなかった。欲のままに突き動かして、みっともなく吐き出してしまう。
「~~♡ でてるぅ……♡ せんせいのあつぅい♡ いっぱいおなかにでてるよお♡♡」
 跳ねるような男根の動きも、叩き付けるように放出される精液も、すべて快感にしかならない。またも絶頂に押し上げられた立香はふとシーツを見下ろした。そこには相変わらずわずかな水分しか垂れ落ちていない。普通ならぼたぼたと、混じり合った体液がこぼれてきそうなものだが――と、考えてまた違和感に気づく。
「……うそでしょ」
 乾いた笑いしか出てこない。
 シーツが汚れないということは、そこに入っている体液が溢れる余地がないということ。つまり、
「なんでまだおっきいの……?」
 尋ねるまでもないことだが、そのくらいの泣き言は口にしても仕方ないもの。挿入したまま二度も射精して、なお堅さも太さもそのままなんて信じられない。おまけに彼は相変わらずペニスを抜こうとはせず、とりあえずとばかりに呼吸を整えている。
 それが済んだらまたがっつくようなセックスが始まるのだろう。しかも、終わりが全く見えない。
 軽率なことなんてするんじゃなかったと、立香はしかし、ちょっとした期待まじりに泣き笑いを浮かべるのだった。