全部海魔のせい

「な、なにしてるんですかマスター!?」
 ぎょっとした声はデミ・サーヴァントの少女のものだった。ロード・エルメロイⅡ世が振り返った先では、マスターたる少女が何かを拾い集めている。
「えー? なんかダ・ヴィンチちゃんが使うから集めてきてって」
「か、海魔の触手をですか!?」
 思わずエルメロイも眉をひそめてしまった。マスターが一心不乱に集めているのはあろうことか先ほど掃討し終わった海魔の触手。人類最後の生き残りで、いきなりサーヴァントのマスターになれと言われて、それでもなんとか今日まで生き延びているあたりたくましいとは思っていたが彼女の精神的な強靭さは想像以上のものだったらしい。
「……あの、気持ち悪くないんですか? 先輩……」
「んー……ぬるぬるしてるけどまあ、タコとかナマコとかああいうのだと思えば」
「ええ……?」
 いくら彼女が海生の軟体動物を食する文化圏にある日本人とはいえ、あれはタコでもイカでもクラゲでもない。あくまでキャスターの使い魔の遺骸だというのに。ドン引きしているマシュにエルメロイは心から共感し同情した。サーヴァントに引かれても収集をやめないあたり本当にマスターはたくましいというかいっそもうふてぶてしいとでも言おうか。エルメロイは吸い始めたばかりの煙草が少し不味くなるようでさらに眉をしかめてしまう。
「おわぁ! まだ動いてる!?」
 相変わらずのマスターは、しかし油断していたのか、びちびちと痙攣した触手に驚いてその場に尻餅をついてしまった。路地裏は薄汚れている上に海魔の粘液やら体液がそこらじゅうに撒き散らされている。
「うええ……べとべとになっちゃった」
「マスター」
 嘆息しながらエルメロイは、それでもなお海魔の触手を手放さない少女の手を引っ張って起こしてやった。黒のスカートとタイツは薄暗い路地の照明程度ではどの程度汚れているか判然としないが、本人の表情から察するに生地にしみこんだ液体は相応に不快らしい。
「うええ、気持ち悪い~」
「そう言いながらも君は海魔の足を手放さないのかね」
「だって貴重なアイテムだもん、ダ・ヴィンチちゃんだってこれで強化アイテムが精製できるかもって言ってたし……」
 つまり酔狂でやっているのではなく、マスターとして戦力増強に努めているのだと言いたいらしい。
「わかったからかき集めたそれはさっさと転送しなさい。マシュ、サークルは?」
「はい、設営できました」
「ええっ、も、もうちょっとだけ……」
 まだ散らばっている海魔の触手を名残惜しそうに見回したものの、結局エルメロイににらまれて少女は渋々転送を許可せざるをえなかった。向こう側では奇人もとい天才が目を輝かせて待ち受けているに違いない。
「少しは役に立つといいんだけど」
 一仕事終えて満足そうに額をぬぐうマスターに、名軍師を宿したロードは口をすっぱくして忠告した。
「戦力の増強に励むのももちろん重要だが、マスター、ああいったものに容易に触るものではない。サーヴァントならまだしも生身の人間である君にどれだけ悪影響があるかわかったものではないのだから」
「え、そうなの?」
 マスターは今更不安そうに両手とエルメロイの顔を交互に見つめている。ため息の数は増えるばかりだった。
「今回は何もなかったかもしれないが、今後も安全なものばかりとは限らない。以後は不用意に手当たり次第に触らないこと」
「はぁい……でも私そんなにあれこれべたべた触ったりしないのに」
「何か言ったかね」
「いえ何も?」
 お説教は早々に切り上げるに限る。マスターは反省の意を適当に表し、さっさと移動しようと彼の背を押した。

***

 衣服についたままだった海魔の粘液はいつの間にか乾いていた。とはいえ汚れがおちたわけではないので早々に洗ってしまいたいのが正直なところだ。まさか旅行鞄を持ってきているわけではないので換えの衣類など一枚もない。ロマニは「今回はローマや大海原じゃないんだし、困ったら現地調達でいいんじゃないの?」といくらかの軍資金も持たせてくれたので当座の着替えを買いたいとエルメロイに申し出たところ、案外すんなりと提案は許可された。
「寄り道している場合でもなかろう! とか言われるかと思った」
「ほう? 私がそのように狭量な人間に見えるかね?」
「いいえ~~先生はなんだかんだで優しいですよね~~」
 ファストファッションの店の袋を引っさげて、少女は着替えのために商業ビルのトイレに姿を消した。この特異点でも連続殺人は起こっているためか、人影はまばらだ。マスターが入っていった化粧室の近くで待機していたエルメロイがあたりを警戒している理由を察したマシュは偵察を申し出る。
「ロード、念のため少し周りを見回ってきます」
「何?」
 いくらロード・エルメロイⅡ世とはいえ、四六時中張り詰めていては疲れるだろう。先ほどの海魔の触手収集でいらぬ心労もかけているだろうし。そう思いついての行動だった。
「マスターの護衛はお願いしますね」
 言うと、エルメロイが止める間もなく彼女は階下へと去っていった。冬木の街に溶け込むため、ワンピースとパーカーを纏った少女はあっという間に姿を消してしまう。まあ、マシュならばそうそう簡単に不覚を取ることもないだろうし、彼女とて年頃の少女なのだからあれこれ見て回りたい店でもあるのかもしれない。と、ある意味勝手に納得したエルメロイは一つ息をついたそのとき、マスターが念話を通じて呼びかけてきた。
『せ、せんせ……たすけて……』
 ぎくりとした。少女の声が震えていたからだ。
「どうした、何があった」
 すわ敵かと思い、身を預けていた壁から瞬時に離れるが、そうではないと否定される。
「では何だ? 何かトラブルなのか?」
『は、はい……あの……来てもらっていいですか……?』
「は!?」
 それはつまり、女子トイレの中に入って来いということか。思わず声が裏返ったエルメロイは女子トイレのほうを見遣る。先も述べたが人影はほとんどない。
『だいじょうぶ、ここ誰もいなかったし、私が入ってからも誰も出入りしてないから……』
「しかし……」
『おねが……あ、うう……』
 苦悶するような声まで聞こえてくる。どうやらのっぴきならない状況になってしまったらしい。
「……了解した」
 仕方あるまい。腹を括ったエルメロイは、もう一度周りを注意深く見回し、人目がないことを確認すると女子トイレへと忍び入った。


 あらぬ誤解を招くわけにはいかないので、エルメロイはトイレの付近に結界を張りめぐらせた。一体マスターの身に何が起こっているのかわからないが、万が一解決に時間がかかるような状況だといけない。そうではないことをもちろん願ってはいるのだが。
「……」
女子トイレの一番奥の個室に入ると、エルメロイは絶句した。せざるをえなかった。
「ご、ごめんなさ、せんせ……」
 着替えの途中だったのだろう、中途半端に乱れた着衣でマスターが息も絶え絶えに苦悶している。汚れた黒のタイツを脱ぐ途中だったのか、右足と左足の膝より上は素肌がむき出しで、タイツは片足の膝の辺りでくしゃくしゃになってひっかかっている。スカートの裾からは下着が見え隠れしていたので思わず目を逸らしてしまったが、上半身は上半身でまた半脱ぎ状態。直視できないような状態だったが、目から入る情報よりも辺りに充満する淫靡な魔力の気配のほうが事態を雄弁に物語っていた。この魔力を発しているのは他ならぬ彼女だ。
「……どうしてこうなったのか自分なりに分析してみたまえ」
 てっきり自分を助けてくれると思っていたのに、落ち着き払ったエルメロイの台詞に少女は失望の色を隠せなかった。
「え……?」
「私には君がどうしてそんなことになっているのかわからん。自分の体のことは自分がよくわかっているだろう?」
「それ、は」
 確かに言われたとおり、自分の体の異常は自分が一番よく理解している。が、エルメロイの態度から察するに、彼とて状況をそれなりに把握しているに違いない。
「まず君の体はどうなっている?」
わかった上で自分の口から言わせようとしているのでは? という疑念が確信に変わった。誰がこんな恥ずかしい状況を口頭説明するもんか、と、抵抗まじりに睨み上げるのだが、エルメロイに逆に見下ろされて渋々に口を開いてしまう。
「からだ、あつくて、くるし……おなかの底、なんか、むずむずして……その……や、やらしいことしたくて」
 そう、今この身は情欲に支配されている。火照って火照って仕方のない全身をもてあましている。信頼している後輩ではなくエルメロイを呼んだのも彼が男だから。この疼きを鎮めてくれると期待してのこと。
「フン、それで? そうなった心当たりは?」
 しかし彼はポーカーフェイスを崩さずに、眉を少し上げて続きを促した。
「た、たぶん……海魔のせい……」
「海魔が何かしたのかね?」
「あの、触手に触ったらなんかビリッてきて、でも痛くはなかったから、このくらい、だいじょぶって、思って……でも、時間経ったら、むずむずして、転んだときに服とかについたとこから、なんかじわじわ広がって、すごくくるしくて、さ、触って、ほしくて……!」
 恥を忍んで訴えたものの、灰緑色の瞳は冷たく見下ろすだけだった。
「要するに君の軽率な行動が今の状況を招いたわけだ」
「せ、せんせ、い」
 瞳には絶望の色が浮かび、少女の体はふるりと震えた。
「まあ粘液由来のものならば精々時間が経てば代謝されて症状もおさまるだろう。いい薬だと思って堪えたまえ」
「そんな、あ」
 このまま、体の疼きを抱えたまま待てというのか?
 苦しい、抱かれたい、楽になりたい、セックスしたい、乱れてしまいたい、滅茶苦茶にされたい。
 体の奥から湧き上がる劣情のまま、少女はエルメロイに縋りついた。
「……何のつもりだ?」
 真正面から抱きつかれ、思わず後ろに一歩たたらを踏んでしまう。華奢な体を引き剥がそうと両肩に手をかけるが、いやいやと頭を振りながら見上げてくる蜜色の目に圧倒されてしまった。目元から耳までが熱のせいで紅く染まり、密な睫の隙間を埋めるようににじんだ涙がひどく淫らに見えた。
「せんせ、ごめんなさい、私が悪いの、でも……苦しいの……! くるしくて、っ、もどかしくて、っはやく、楽になりたい、から」
 喉が鳴る。馬鹿げているという自覚はある。おそらく一回り程度離れている、こどもとしか言えない少女相手に欲情してどうする?
「だから?」
 それなのに自分は、彼女の姿態に酷く興奮してしまっている。押し付けられた肉体の柔らかさ、吐息の熱さ、甘く鼻につく香り。女になろうとしている体のなんとみずみずしくも、淫猥なことか。
 突き放さなければならないとわかっているのに、エルメロイの手は少女の小さな顎を掬い上げるように捉えた。そもそも体を引き剥がす気などなかったのかもしれない。これはきっと自分にも海魔の粘液が影響を及ぼしているせいだ。彼女の甘い誘惑を通して。
「望んでいることがあるのなら、はっきりと言いなさい」
 卑怯だな、と、内心で自嘲した。自分は分別のある大人のフリをして行動の原因はすべて彼女に押し付けようとしている。その分、求められた以上には答えてやろう。だから、もっと淫らに強請るといい。
 細められた眼差しは、少女を縋らせるのに十分だった。
「おねがい……触って……せんせいの、ほしい……」


 少女はさほど上背がないので、エルメロイと口付けるためには自然つま先立ちにならざるを得ない。つたないキスに応えているエルメロイは壁に背を預け膝を曲げているが、それでも時折マスターの膝がかくりと崩れかけて体勢が乱れてしまう。
「ふあ、あ、」
「マスター、ちゃんと立ってくれないと汚れるぞ」
 含み笑いで告げられて、少女は抗議するように彼の首に回した腕を引いた。
「だって、あ、ああ、せ、んせ、が、触って、んっ」
エルメロイの片手は背中、もう片方の手は太ももの付け根あたりを焦らすようにまさぐっている。それがもどかしくも快感すらもたらしてしまうのでびくびくと震えてしまうし、うっかり快楽に集中してしまうと下半身から力が抜けてしまう。
「まだ敏感なところには触れてもいないというのに、これでは先が思いやられるな」
「ん、う……あ、あっ、せんせぇ、おねが、さわ」
 とはいえ決定的なものを求めてしまうのは避けられないらしく、少女は身を捩って懇願を繰り返していた。どこまで焦らしてやろうかとちょっとした嗜虐心すら覚え始めていた彼の指先に、ぬるりとしたものが触れる。どうやら堪えかねて溢れたものが内腿を伝ってきたらしい。
「……ほう、触る前から君はこんなに濡らしているのか」
 てらてらと濡れる指先を見せ付けると、少女はさらに欲情したように息を荒げさせる。
「せんせ、じらさないでよ……」
 お願い、という一言は唇に飲み込まれた。半開きだった小さな口の中に、ぬるりと舌が侵入してくる。熱い。自分のそれよりも大きく力強い舌にかき乱されるのはたまらなく気持ちいい。完全に受身になってただ蹂躙されるだけのキスは、セックスそのものにすら感じられる。こうやって自分の中を彼の熱で満たしてほしい。何度も何度も打ち付けて、かき回して、ぐちゃぐちゃに愛して欲しい。想像するだけで指の先まで痺れてしまう。口の中が性器になったかと思うような快感。このままでは、
(っあ、あー♡ だめ、イっちゃう、キスだけで)
 駄目だ、と思った瞬間、小さな舌は甘噛みされた。
「ん、っう、んんんん!!」
 ただそれだけで全身を痙攣させてしまう。イってしまった。キスだけで、舌を軽く噛まれただけで。
 もしかしたら念話のパスに淫らな願望が乗っていたのかもしれない。エルメロイは少女が達したのをわかっていながら、絶頂の余韻に何度も押し上げるように舌への愛撫をやめなかった。自分の舌は生殖器にでもなってしまったのだろうかと、ありえない考えが浮かぶほどの強烈な快感に頭の中がチカチカする。煙草のせいか苦味のある唾液が口の端からこぼれていく。それすらも擬似的な性交の残滓のようで、昂ぶりは収まることを知らなかった。
「ふあ……あ……♡」
 ようやく離れた唇からは呆けた吐息しか漏れないし、全身どこを触られてもだらしのない声しか上げられない。
「ずいぶん感じやすい体になったものだな」
 呆れているような台詞の奥に、くすぶる熱が感じられた。見上げた双眸は少女を見下ろしながらその肉体を求めている。内側に入り込んで、ぐずぐずに溶かしてしまいたいとすら切望している。それがわかってしまい、達した直後にもかかわらず更なる熱を求めてしまう。
「せんせ、だって……こんなにしてる」
 首に回されていた腕の片方がするすると下り、胸と腹を通り過ぎたところで止まる。スラックスの上から握りこまれたそれはすでに十分に形を主張していた。
「さっきからおなかにあたってんだから……」
 そのまま撫でるように手を動かすと、頭上で湿った息が吐かれるのを感じた。
 嬉しかった。自分の体に、痴態に、彼もまた欲情している。それを何よりも雄弁な形で知らされて、胸のうちが満たされていくのがはっきりとわかる。
「せんせ、はやく、これ……ちょうだ、あ、え? ああっ!?」
 早くこれで貫いて欲しいと口にしたのに、そこに埋め込まれたのは望んだものではなかった。
「なるほど、強請るだけのことはある。これならば解す必要もないわけか」
 後ろから回り込むようにして伸ばされた手が秘裂を撫でさすったかと思うと、ごつごつとした中指がぬちぬちと侵入してくる。ぬめった内壁との隙間がほとんどなくなるほどの締め付けで、抜き差しするたびにこぷこぷと愛液が溢れて滴った。
「あ、あー♡ ゆびっ♡ せんせ、ぇ、ゆび、やああっ♡」
「指では不満か? マスター」
 意地の悪い笑みを浮かべても、少女はお構いなしにあけすけな欲望をぶつけてくる。
「う、あ、ああっ♡ いれて、早く、せんせぇの、ほしい♡」
 なりふり構わない懇願とともにぎゅうと自身を握られてエルメロイは少し眉間の皺を深くした。そろそろ自分も熱をもてあまし始めている。ねっとりと濡れた指先が知ってしまった粘膜はどれだけよくしてくれるだろうかと想像するだに恐ろしい。未成熟な肉体におぼれてしまう背徳は、自分が知っている何よりも甘い蜜の味に違いない。
「そこに手をつきなさい」
 くるりと少女の体を反転し、壁に両手をつかせる。考えてみれば服を着たままだが汚れてもどうせ着替えるのだから問題はないだろう。黒いスカートをめくり上げ、下着のクロッチを横にずらせばねっとりとした粘膜がもの欲しそうにひくついている。
「まったく、君は――」
 自分でも、続けて何を言おうとしたのかわからなかった。サーヴァントである自分のマスターがこうも迂闊なのが情けないのか。あるいは教え導く立場の自分が、何のことはない小娘風情に欲情させられ、求められるままに劣情をぶつけているのが腹立たしいのか。性急にベルトを外しスラックスの前をくつろげるとエルメロイは張り詰めた己を取り出した。マスターは金具や布の擦れる音だけで、快楽の予感を察して腰を後ろに突き出す。
「せんせ……♡」
 とろけた顔は男を煽るのに十分すぎる。いい加減我慢も限界だった。背後からかき抱くように腕を回し、首筋に唇を寄せたまま、
「入れるぞ」
 屹立をつき立てた。
「っあ、あーーっ♡ ああっ♡ ふあ♡ うあ、ぁん♡」
 待ち望んでいた熱に貫かれ、少女は全身を歓喜に震わせる。ぎゅわぎゅわと締め上げるようにうねる粘膜は、これこそが快楽を与えるものだと確信しているのだろう、それを放すまいと絡みついた。
「……ぅ、く……マスター」
 うごめく内壁に締め上げられるような快感だった。気を抜けばすぐにぶちまけてしまうに違いない。びくびくと震えたままのマスターの体にしがみつくようにして、エルメロイは寄せる波のような快感をやり過ごそうとした。その間にも不規則な吐息が少女の首筋や耳元に吹きかけられる。わざとではないとわかっているのにたかだか溜息一つで快楽の余韻が増幅されてしまう。もっと、もっと欲しい。
「ああっ♡ らめっ、イっちゃ♡ イっちゃった♡ せんせぇの、いれられただけでイっちゃったよお♡」
 一回や二回じゃ足りない。もっとかき乱してほしい、もっとぐずぐずにとろけさせてほしい。その先を求めるように自ら腰をゆする少女の耳に、エルメロイは唇で触れながら囁いた。
「そんなにこれがほしかったのか?」
「ふあああん♡ やぁっ♡ みみ、みみだめぇ♡ みみっ、ぞくぞくしちゃ♡」
 そこには何もしていないというのにぎちぎちと収縮するものだから、少女の感度のよさに彼は満足そうに息を吐いた。
「ほう、耳も性感帯か。ん……こうして舌でかわいがってやると、中がぎゅうぎゅうに私をしめつける」
 外耳の凹凸に舌を這わせ、耳たぶを唇でやわやわと食み、穴の中に舌をねじ込んで陵辱を尽くす。そのたびに全身で快楽を受け止め、嬌声を上げる彼女はひどく淫らだった。
「あ、あ、うあああっ♡ せんせ、せんせぇ、やあっ♡ あ、あー♡」
「マスター、あまり大声で喘ぐと人がくる」
 恥らった姿でも見せてくれればと思った上での発言だったが、エルメロイの予想に反し少女は艶然とした笑みを返してきた。
「しってるもん、せんせ、結界張ってるでしょ?」
 さすがに驚いた。彼女は見たところずば抜けた才があるわけでもないし、魔術を学んだわけでもないのにきちんと把握している。
「何だ、気づいていたのか」
「あは♡ すごい?」
 褒められたいという意思を隠さない笑顔は年相応のもので、思わず苦笑してしまうが、かわいい、と、思うと同時にまたも嗜虐心を刺激された。
「そうだな。君は実は優秀なのかもしれないな。が、今そういうことを言うとは、まだ余裕があると見える」
「え? ――っ!?」
 ずぬぬ、と、引き抜いたかと思うと細い腰を引き寄せて一気に最奥を穿つ。
「っあ、あー!! あ、お、おくっ♡ おくしゅご、お、あ♡ おくまでとどいて、っ、うあああっ♡」
「ふ……は、あ、マスター、思う存分に乱れるといい」
「ひんっ♡ ごりゅごりゅって♡ うあっ♡ こんなの♡ あっんん♡」
 何度か激しい抽送を繰り返したり、小刻みな動きで内壁の一点をえぐったり、思うままに攻め立てるほどに快楽が増していく。
「んあ、あっ♡ これっ♡ こんなのらめぇ♡ せんせぇのかたちになっちゃう♡」
「っ、は、いいじゃないかマスター、それで、なんの問題がある?」
「せんせ♡ っあ♡ すき♡ らいすきぃ♡」
 舌足らずに叫ばれた幼い慕情、それを笑うわけではないが、笑みがこぼれるのをとめられなかった。熱に浮かされただけの妄言を喜んでいる自分が愚かだと思ったのかもしれない。それが真実ならばと夢想したのが滑稽だったのかもしれない。ただ明らかなのはその言葉で昂ぶりがいっそう激しくなったことだけ。
「マスター、っ、そろそろ、」
 絶頂が近いことを告げると、少女は知っているとでも言いたげに何度か頷いた。
「せんせぇの、中でおっきくなってる♡ っあ♡ 出して♡ いっぱい、わたしの、なか、だして♡」
「っ、馬鹿を、言うんじゃない」
 そうしたいと思っているのを見透かされた気がした。避妊具も使わずにセックスに及んで今更何を言われれば返す言葉もないが、まさかこのまま膣内にぶちまけてしまうわけにもいかないだろう。
「だって♡ せんせぇの、ほしいんだもん♡」
 ああ、でもこのまま吐き出してしまったらどれだけいいだろうか。普段なら絶対に考え付かないことを思うのも海魔のせいだろうか。きっとそうに違いない。こうやって年端もいかない少女を抱いて、快楽をむさぼって、そうして――
「あ、っあ、ぐ……マスター、っは、あっ!!」
「あっ♡ せんせぇの、出てる♡ あつい♡ いっぱい、いっぱ、あ、あーーっ♡♡」
 欲望のままに彼女の中で果てるなど。

「っは、はぁ、は……」
 抗いがたい快楽に流されるまま膣内に射精してしまった後も、挿入したままに余韻をたっぷりと味わってしまった。なんてことだと頭を抱えたくもなるがやってしまったことはどうしようもない。同じく絶頂の余韻に浸ったまま呆けているマスターから萎えた自身を引き抜くと、ぼたぼたと精液が垂れ落ちてきた。
「ふ……う」
「んあ……♡」
 名残惜しそうに震える少女の体を支えてやると、うっとりとした笑顔を向けられる。さてもどうしたものか。考えることは多くあるが、今ばかりはくすぶる熱を冷ますことに専念したい。しかし辺りに満ちた甘ったるい魔力は、今だ収まることを知らないらしかった。